【取材協力】
春山貴志先生
(猫の病院シュシュ(東京都江戸川区)院長)
北海道大学獣医学部卒。動物に優しく、動物が本来持っている自然治癒力を高めていけるような治療をモットーに、飼い主と動物たちとの信頼関係作りに努めている。ISFM(国際猫医学会)所属。監修著書「もっと猫に言いたいたくさんのこと」(池田書店)。愛猫のフーコちゃんと。
抜本的な解決には、歯ブラシによるケアが必要
猫は人よりも歯周病になりやすく、3歳以上になると、かなりの確率で歯石が付着しています。とくに歯石がつきやすいのは上の奥歯。その付近に唾液腺があり、唾液中のカルシウム成分が歯垢に染み込んで石灰化させ、歯石をつくります。
本格的にデンタルケアを行うなら、歯の表面に付いた汚れだけでなく、歯ブラシで歯の間や歯周ポケットの歯垢まで取り除かないと、抜本的な解決にはなりません。猫の場合、歯垢が歯石に変わるのは約1週間といわれ、週1回以上(できれば毎日)のお手入れが必要になります。
歯ブラシが無理なら、補助的なグッズで
しかし、ほとんどの猫は口を触られるのが大嫌いですから、歯ブラシでの歯みがきは、若いうちから慣らしておおかないと、かなり難しいと思います。
ブラシが無理なら、ガーゼや手袋で歯を拭ってあげる、使い捨てのデンタルシートを使うなど、補助的なケアで進行を遅らせる努力をしましょう。猫用の歯みがきガムやスナック、歯石がつきにくいフードなどもありますが、丸飲みする猫だと効果は出にくいですね。
口の中をまったく触らせてくれない猫が歯肉炎などを起こした場合は、デンタルジェルを使用することもあります。炎症を抑えたり、歯垢・歯石をつきにくくする効果があり、直接患部に塗らせてくれないときは、鼻の頭に付けたり前肢の甲に付けたりします。猫は気にして舐めるので、ある程度の浸透が期待できます。
スケーリング(歯石除去)時の麻酔のリスク
歯石がしっかり付着してしまった場合は、麻酔をかけてのスケーリング(歯石除去)が必要になりますが、麻酔のリスクを心配される飼い主さんもおられるかもしれません。
麻酔薬は肝臓と腎臓で代謝されるため、そこに持病のある猫は麻酔のリスクが高まります。そこで、事前に血液検査や尿検査などを行い、十分に状況把握をしたうえで可否の判断をします。
スケーリングを行う時期
麻酔のリスクは高齢になるほど高くなりますから、7歳ぐらいになれば、まず動物病院で歯の状態を診てもらうことをおすすめします。それほどひどい状態でなくても、まだ元気なうちに一度、麻酔をかけてきれいにした方がいいでしょう。その後、きちんとケアしていけば、より健康的に余生を過ごすことができます。ただ歯石がたまりやすい猫は、自宅でケアしきれないことが多く、数年後にまたスケーリングが必要になることもあります。
歯の健康はとても大切です。ごはんを食べられなくなると、体に大きな負担となります。飼い主さんは、愛猫のデンタルケアにもっと関心をもっていただきたいと思います。