犬より猫の方が目やにが出やすい?
ペットウェル閲覧データを見ると、猫の病気事典では、気になる症状として「目やにが出る」が年間トータルで第1位。一方、犬の病気事典で「目やにが出る」は、年間を通して上位10位に入ることも珍しい状況です。
なぜ犬と猫でこれほど差が出るのか、長年猫の専門医療に携わる服部幸先生(江東区・東京猫医療センター院長)に猫の目やにが出るしくみと原因についてうかがいました。
犬より猫の方が目やにが出やすい?
目やにが出るしくみ
犬に比べて、猫は目やにが出やすい体のしくみなのかと服部先生にうかがってみたところ、「犬と猫で、目やにが出るしくみに違いはありません」とのこと。そこで、まず目やにとは何か、どうして出るのかについて教わりました。
目は通常、涙で守られています。涙の中には、水分のほかに、油分・粘液が含まれており、これらが層になって目を守っていますが、この粘液に、代謝による古くなった細胞や目に入ったゴミなどが混ざってできた老廃物が目やにです。少量の目やには、皮膚の垢などと同じように、正常な代謝活動によるもの。普段はまばたきをすることで涙とともに鼻涙管を通って鼻腔に流されますが、寝ている間はまばたきをしないため、寝起きに目頭や目尻に目やにがついていることがあるのです。
ところが、細菌感染を起こすと、涙の中に「膿」が混ざってきます。また、アレルギー反応を起こしたり、目に傷がついたりウイルスなどが侵入して炎症を起こすと、目を守るための免疫反応の1つとして涙が大量に出ることがあります。時間がたつと二次的に細菌感染を起こすこともあり、このような膿状の目やにが出てきます。これが異常な目やにです。
犬と比べて猫に目やにトラブルが多いのは、「細菌やウイルスを媒介して結膜炎などを引き起こす感染症が、犬より猫に多いからではないでしょうか」と服部先生は分析します。
猫の目やにトラブルの原因となる伝染病
猫に目やにが増える原因となる感染症には、どんなものがあるのでしょうか? 「ヘルペスウイルス、カリシウイルス、クラミジアなどのいわゆる猫風邪といわれる感染症で、これらは人の風邪と同様に、くしゃみ、咳、鼻水、よだれなどで感染します」と服部先生。しかも、厄介なことに、ヘルペスウイルスの場合、一度でも感染すれば、回復後もウイルスが神経細胞などに身を潜め、キャリア状態となり、猫の免疫力や体力が衰えたときに、再発をくり返すことがあるそうです。「これらの感染症は、ワクチン接種によって予防できるので、混合ワクチンを子猫のときからしっかり接種することが大切です」。
猫の場合、飼うきっかけが、捨て猫を拾ったり保護された猫の里親になるケースも多く、野良猫のときに感染してキャリアになっていることも多いため、犬と比べて目やにトラブルが多いのかもしれませんね。
目やにが出たら、ここに注意して観察を!
愛猫に目やにが出ていることに気づいたら、どんなことに注意したらよいのかを尋ねたところ、「いい目やにと悪い目やにがあることを知ることです」とのお答え。そこで、その見分け方のポイントを教えていただきました。
色と量
まず大切なのが、目やにの色や量をチェックすること。コーヒーの絞りかすのような赤~赤褐色の目やにが、目頭や目の縁に少量ついているような場合は、正常な新陳代謝によるものと考えられます。目やにが黄~緑または白色の場合は細菌感染が疑われ、外傷や花粉症その他のアレルギーによる場合は、透明でサラサラした涙が出ます。涙が止まらないようなときは角膜などが傷ついている恐れもあるため、早めの受診をおすすめします。反対に、涙の量が少なすぎて目やにが眼球についている場合もトラブルのサインと考えられ、注意が必要です。
どちらの目から出ているか
どちらの目から出ているかも、大切なポイント。両目から出ている場合は、細菌やウイルス感染の可能性が、片目のみの場合は、ケンカやゴミが入るなどの外傷の可能性が高くなります。
※経過が慢性的になっている場合は、ヘルペスウイルスでも片目のみに目やにが見られるケースもあります。
目の様子
目やにや涙の状態だけでなく、目の中にも注意が必要です。痛がって閉じてしまう場合、瞳孔の大きさが左右対称でない場合、透明な部分に濁りが見える場合、まぶたをめくって腫れていたり白目が充血していたりする場合は、早めに受診を。
家庭での目やにケア
最後に、自宅でのケアについてもお聞きしました。「目やには放っておくと固まってしまうため、気がついたときに湿らせたコットンやガーゼなどでこまめに拭いてあげることが1番。このとき、眼球には触らないように気をつけてください」とのこと。人用のウェットティッシュはアルコール成分が入っていることがあり、目を刺激して逆効果になることもあるので、注意が必要です。ウェットティッシュを使用する場合はペット用のもの、もしくは赤ちゃん用のアルコール成分が入っていないものがおすすめです。
また、「細菌やウイルスによる感染が疑われるような目やにの場合は、感染力が非常に強いため、ほかの猫への感染を防ぐためにも、なるべく早めの受診を」と、服部先生は注意を呼びかけます。症状が軽い猫風邪はとくに治療をしなくても自然に回復することもありますが、放っておくと気管支炎や肺炎に至る危険性もあるので、子猫や高齢猫は油断できません。
「健康な成猫で、目を痛がったり気にするそぶりが見られないのであれば、あまり神経質になる必要はありませんが、目はかけがえのない重要な器官であることを忘れずに」。
【監修】
服部幸先生(江東区・東京猫医療センター院長)
アメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health Centerにて研修プログラム修了。8年間、猫の専門医療に携わり、2012年に東京猫医療センターを開院。
東京猫医療センター http://tokyofmc.jp/