ペットのメタボは万病のもと!正しい体重管理で肥満リスク回避を

肥満は健康に害を及ぼすものとされ、人間の社会ではメタボリックシンドローム対策も浸透してきました。ペットの肥満は人間と同じ、様々な病気の原因になります。ところが自分のペットが太っていると気付いていない飼い主さんが案外多いのです。ポッチャリがかわいい、コロコロした姿が愛らしい…気づかないうちに肥満ははじまっているかもしれません。肥満がもたらすリスクや体重管理について、ACプラザ苅谷動物病院統括院長である内田恵子先生にお話を伺いました。

2013年4月12日RSSRSS

【取材協力】
内田恵子先生(ACプラザ苅谷動物病院)http://www.ac-plaza.co.jp/

【記事制作協力】
日本ヒルズ・コルゲート株式会社http://www.hills.co.jp/

肥満が命にかかわる病気を誘発する

現代ではペットは家族の一員として一緒に暮らすようになり、その食生活やライフスタイルは人間に合わせたものになってきています。食生活やライフスタイルが同じであれば、飼い主さんの体型とペットの体型がよく似てくるのも不思議ではありません。ペットと一緒に食事をしていて、せがんで甘えられれば、ついフードやおやつをあげたくなってしまいます。飼い主さんの気持ちはとてもよくわかりますが、そうした飼い主さんの行動の積み重ねで太ってしまうペットが増えてきていると感じます。
人間の肥満による生活習慣病が問題視されているように、いまペットも肥満によって健康を害するケースが増えています。例えば太りすぎで股ずれを起こして皮膚炎になった、重い体重を支えるために足が変形した、首や胸に臓器内脂肪が増えて気管虚脱の症状を悪化させた、太った身体全体に血液を送る心臓に余計な負担がかかり心臓病を招いてしまった…適正な体重でないことは身体のあちこちに悪影響を与えます。また糖尿病は遺伝的な要素もありますが、太り過ぎが発症の要因になります。
もちろん肥満の程度によって病状は異なりますが、肥満を放置すればさまざまな病気の引き金となり、時に命にかかわる重篤な状態を招くことにもなるのです

飼い主さんの「あげたい症候群」が肥満に拍車

ペットの肥満の原因として、室内飼育による生活環境の快適化、運動不足、そして間違った食習慣による栄養過多などがあげられます。肥満の危険性を認識していても、ペットの食欲がないと不安になる飼い主さんが少なくありません。「朝ごはんを食べない、どうしよう…。」と心配になり、昼、夜の食事に何かを足してみたり、欲しがればおやつを喜んで与えたりしてしまう。そんなことをしていれば、次の食事の時に食べなくなるのは当然で、どんどん食習慣が乱れていくことになります。
特に犬や猫が子供から大人になる時期は食事量が変わります。生後3~4ヶ月はカラダを作る時期なのでどんどん食べますが、6~8ヶ月ぐらいになるとカラダの成長速度は緩やかになるため、食事量が減るなどの変化があっても健康上大きな問題はありません。ところがそれを理解しないまま、子供の頃と同じ食事量が必要と思い込み、いつまでも必要以上の食事量を与えてしまう飼い主さんも多いのです。
犬や猫の生態を理解しないまま、人間と同じ感覚で食事を与えることは正しいことではありません。例えば猫の場合、1日に20回ぐらい狩りをする動物と言われています。野生の状態だったら成功率はおそらく1回か2回。もし20回も食事をしていたら太りすぎて狩りなどできなくなってしまいます。猫が求めるままに食事を与え太らせてしまうことは、非常に不自然なことなのです。
また犬や猫は不妊去勢手術をした後に太りやすくなる傾向があります。例えば卵巣子宮摘出の手術をした場合、通常約20%のカロリー制限が必要になります。けれど辛い手術をしたばっかりなのだから我慢させるのはかわいそうと、普段通りに食事を与えてしまう飼い主さんが多くいます。1週間後の抜糸までに100g、200gと体重が増えているケースもあるのです。

動物病院への定期訪問で肥満防止・ダイエット成功を

動物病院へ定期的に訪問しているペットは太りにくく、少し太ってしまっても痩せやすい傾向にあります。診断・診察時において、体重測定や問診、触診、聴診などによってペットの状態を正しく判断し、問題があれば食事や運動量などの生活改善指導をその都度おこなうことができるからです。また動物病院で定期的に体型や体重をチェックすることで、その推移を細かく確認することができます。当たり前のことですが、肥満の程度が低いほど、減量も容易になります。
動物病院でペットのダイエットに取り組む場合は、まずは飼い主さんへ食事や生活の状態をヒアリングすることからスタートします。自宅で食べ物をいつ、何を、誰が、どのぐらい与えているのか、運動量はどのぐらいなのか、などを調査することが必要です。そうしたご家庭の生活習慣を全て把握したうえで、はじめてそのペットにあったダイエットの方法を導きだせるのです。
食事指導としては、それぞれのペットにあったカロリーを計算して、1日分の量としてフードもおやつも全て1つの袋に入れ、小分けにしてお渡しします。何よりも重要なことは、飼い主さんのペットの肥満に対する意識と行動なのです。家族全員が小分けにした袋から、1日分だけをあげるように徹底する。食器が空になってもフードは追加しない。茹でた野菜などをあげる場合も、その分の量を減らすことが必要です。またコングにフードを入れるなど、遊びながら食べられるようにすると、犬猫が本来持っている「食べ物を探す」という欲求を満たすことができるため、減量に効果的です。ただし急激な減量はよくありません。いままで胃が認識していた食事量が急に減ると飢餓を察知し、猫の場合は極端に運動量が減ってしまうとされ、逆に太ってしまう可能性さえあります。
さらに効率よく健康的に減量させる場合は、動物病院で取り扱うダイエット用フードなどを利用します。そして減量期間中は1週間に1回、できれば毎日1回など、体重を定期的に測定することが大切です。理想の体重とは、1歳時の体重を生涯を通じて維持することとされています。ペットは200gや300g減量しただけで、動きは大きく変わります。体重測定の度に写真を撮って、減量前の姿と比べてみるのも楽しいものです。

食欲を満たすことが愛情のバロメーターではない

ペットは人のように自分で食事の内容や回数を決めることはできません。ペットが肥満になってしまうのは、 一緒に暮らす飼い主さんの日々の行動や習慣に原因があるからです。ペットの食欲を満たすことを愛情のバロメーターのように思っている飼い主さんも多いですが、適切な食事管理、体重管理をおこない、ペットにいつまでも健康で長生きしてもらうようにすることが本当の愛情だと思います。正しい食事量を把握してそれを守ること、おやつは出来る限り与えないようにすること、適度な運動を行うこと、体重や体型を定期的にチェックすることなど、肥満にさせないための行動、生活習慣を家族みんなで心がけるようにしてください。もしペットの適切な体重や体型、また食事量や運動量が分からなければ、気軽に動物病院で相談してみてください。きっと心強いパートナーになってくれるはずです。

ペットの肥満が気になる方はチェック!

症状や生活習慣で当てはまるものがあれば、早めに動物病院で相談してみましょう。

関連リンク

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