冬に下痢をする犬が増えるってホント?
冬になると実際に下痢をする犬が増えているのかを確かめるために、文京区小石川の小暮動物病院院長・小暮規夫先生にお話を伺いました。実際に毎日ペットの診療にあたっている小暮先生によると、「下痢が原因で来院するケースは、冬場にとくに増加しているわけではありません」とのこと。ではなぜ、この時期に愛犬の下痢を心配する飼い主さんが増加するのでしょうか。また、冬に愛犬が下痢をする原因として考えられるものはいったいどんなことがあるのでしょうか。さらに詳しくお話を伺いました。
下痢の原因、実はストレスがNO.1?!
冬の下痢の原因として、人と同じように考えてしまいがちなのが、寒さによるお腹の冷えやウイルス。「(そのように考えがちですが)犬はもともと寒さに強いため、冷えが原因で下痢をすることはほとんどありません。また、いろいろな感染症の初期症状やパルボウイルス、コロナウイルスの感染による下痢なども考えられますが、混合ワクチンを定期的に追加接種していれば、まず心配はありません」とのこと。
むしろ、冬特有の原因としては、冬は散歩などの運動量が減り消費カロリーが減少するために、食事量が少なくなるケース、普段与えないものを与えてお腹を壊すケースも考えられるとのことです。こうした場合は、飼い主さん自身で下痢の原因が思い当たることが多いので、それほど不安になることもなく、来院まで至らないのかもしれません。
そこで、季節に関係なく犬の下痢の原因として多いものは何かを伺ったところ、「ストレス性の下痢症が1番多いんですよ」と驚きの回答が。食べ過ぎや変わった食べ物が原因ではない場合、ストレスが下痢の原因になっていることが多いのかもしれないと先生はおっしゃいます。
年末年始は子供さんなどの来客や人の行き来が増えたり、ペットホテルに預けられたりなど、いつもと違う環境に置かれることが多くなり、愛犬にとって大きなストレスとなっている恐れがあります。しかしながら、ストレス性の下痢の場合、状況が落ち着き、緊張状態が解けてから症状が現れるため、飼い主さんが原因に気づきにくいことも多いようです。愛犬が下痢をしたとき、食べ物など思い当たる原因がない場合は、愛犬にストレスがかかっていないか、一度生活環境を振り返ってみることが大切です。
愛犬が下痢をした際に気をつけたいこと
それでは、実際に愛犬が下痢をしたら、どんなことに注意をしたらよいのでしょうか。そのポイントを先生に伺いました。
まず大切なのが、愛犬の様子をよく観察すること。便の状態・におい・回数などをチェックするのはもちろんのこと、下痢以外の症状が出ていないかをよく観察しましょう。下痢のほかに嘔吐などの症状がなければ、水や食事を与えても大丈夫です。多くの場合、下痢単独の症状であれば、一過性のものと考えられますが、他の症状を併発している場合は、命に関わる恐れもあるので要注意です。 また、いつもと違う食べ物を与えていないか、環境の変化はなかったか、オモチャや食べてはいけないものを誤飲した可能性はないか、下痢の原因として思い当たることがあれば、それを取り除きましょう。
こんなときはすぐ病院へ!
夜間や休日などに愛犬が下痢をした場合に難しいのが、病院へ連れて行くか、自宅で様子を見るかの見極めではないでしょうか。その基準として、先生は「下痢と合わせて嘔吐・元気がないなどの症状が見られた場合は、すぐに病院へ連れて行くこと。子犬や高齢犬の場合は、成犬に比べて重い脱水症状を起こすので緊急度がより高くなります」と教えてくれました。一方、下痢はしていても食欲・元気があれば、朝まで様子を見ても大丈夫なことが多いようです。また、下痢の便が血便の場合は腸の粘膜が傷ついているため、ほかの症状がなく緊急性がはないようの思われても、一度受診することをお勧めします。
来院する際には、愛犬の便の状態や回数などをきちんと伝えられるように準備しておきましょう。便のついたトイレシートなどを持参するのも1つの方法です。また、誤飲の可能性など原因として思い当たることがあれば、獣医師に伝えることも大切です。
たかが下痢、されど下痢
Petwell(ペットウェル)では、下痢症と合わせてパルボウイルス感染症や膵炎などの重篤な病気が閲覧されていることが多く、原因がはっきりしていない状況での下痢の場合、飼い主さんの不安はいかほどかと推察されます。けれども今回、小暮先生にお話を伺ったことで、犬の下痢にはさまざまな原因がある中、ストレス性の下痢が意外に多いことがわかりました。
愛犬の下痢を防ぐためには、食べ過ぎや誤飲などに気をつけるとともに、愛犬にストレスがかかっていないかに気を配ることも非常に大切なこと。犬では下痢はよく見られる症状でもあるので、食の調整で改善される場合は過度の心配は必要ありませんが、たかが下痢と軽視していては、大きな病気を見逃す恐れもあります。実際に下痢の症状が出たら、愛犬の様子をしっかり観察し、適切な対応をしていきましょう。