災害時の同行避難、動物救護…着々と広がるペットの防災対策、その心構えと日頃の準備

9月1日は「防災の日」。学校や職場、ご家庭等で避難訓練を行った方も多いのではないでしょうか。Petwellでは、人の安全を守ることはもちろん、災害時に家族の一員であるペットを守るために必要なこと・大切なことは何かを、ペットとの同行避難を前提にさまざまな対策に取り組んでいる新宿区保健所衛生課の高木優治さんにお伺いしました。

2012年9月13日RSSRSS

避難所での動物救護対策、その主体は飼い主さん

昨年3月の東日本大震災の際、とくに原発による避難でペットが置き去りにされたことから、災害時のペットの防災対策に対する意識が高まっています。自治体の中でもペットの防災対策が進んでいる地域の1つとして知られている新宿区では、1995年の阪神淡路大震災をきっかけに動物救護対策への取り組みが進められ、2003年に東京都獣医師会新宿部と災害時における動物救護活動に関する協定を結び、2004年には避難所内での動物救護対策のあり方を示した『動物救護マニュアル』を作成、各学校避難所に配布することになりました。

新宿区の各学校避難所には、災害時の混乱した状況下でも速やかに避難所運営が行われるように、運営管理協議会が設置されています。『動物救護マニュアル』では、この運営管理協議会の元で動物の飼い主を主体とした動物救護部を立ち上げ、動物救護所を設置・運営していくための作業法が細かく記載されています。
「災害時、避難所のすべて(新宿区の場合49カ所)に行政の職員が常駐することは不可能です。現実には、現場にいる人同士が助け合い、避難所運営を進めなければなりません。人間と動物の居住スペースの分け方や衛生管理、名簿管理など、具体的な方法を示した『動物救護マニュアル』は、できるだけ早く救護活動を開始できる態勢の整備と運営を目的としています」と高木さんは言います。

ちなみに『動物救護マニュアル』では、避難所における動物救護対策の基本方針を次のように規定しています。

  1. 人間の居住場所と動物の飼育場所を完全に分離し、動物はケージもしくは係留での飼育
  2. 避難所での動物の世話は飼い主による自主管理が原則(餌やケージ等飼育に必要な用具も原則として飼い主が用意)
  3. 飼育に伴う必要な作業(飼育場所の管理等)は各飼い主が共同で行う
  4. 飼い主不明動物は、保護先が決まるまで飼育動物と同じ場所で一時的に飼育する

ペットの防災対策で大切なこととは

それでは、ペットの防災対策について、飼い主さんはどんなことを心がけるべきでしょうか。高木さんにお聞きしてみました。

日頃のしつけとペットとの信頼関係が何より大事

「一番大切なことは、日頃のしつけと信頼関係です」と高木さん。避難所でペットがトラブルの原因になりやすいのは、犬なら「吠える・咬む」の問題。避難所では、基本的にペットと飼い主は離れて生活するので、もし飼い主と離れることに不安を感じる犬が吠え始めると、他の犬にまで波及して一斉に吠えることにもなりかねません。
こうしたトラブルを避けるためには、「飼い主と離れていても眠れること」「ケージ内でおとなしくできること」「むやみに他の犬や人に攻撃的な態度をとらないこと」など、基本的なしつけができていることが求められます。普段から愛犬との信頼関係を築き、緊急時にも飼い主さんの指示に従えるようにしておくことが、大勢の人が集まる避難所生活ではとても重要なのです。

以前、新宿で行ったペット同行避難訓練では、起震車(地震を疑似体験できる車)やけむりハウス(火災時の煙の怖さと避難方法を体験できる設備)も、ペットと一緒に体験してもらったそうですが、予想に反してパニックになるペットは一頭もいなかったとか。「訓練ということで飼い主さん自身が落ち着いていたため、ペットもパニックにならずに済んだのでしょうが、それでも飼い主さんとの信頼関係がしっかり築けていたからこそです」と高木さんは評価します。

普段からのご近所づきあいがペットとの避難所生活を円滑に

そして、高木さんが、ペットのしつけとともに、もう1つ重要なポイントとして指摘するのが「ご近所づきあい」です。「動物が好きな方から嫌いな方まで、さまざまな人が集まる避難所で、ペットがトラブルを避けて過ごせるかどうかのカギは、普段からマナーを守ってペットを飼育し、地域住民同士で良い関係を築いているかどうか。そこにかかっているのです」。
ペットの飼い主同士なら日頃からいろいろ接点があり、コミュニケーションをとるのも比較的容易ですが、ペットを飼っていないご近所との良好な関係づくりも、避難所生活を円滑にするには不可欠というわけです。

家族で話し合って、ペットの防災対策をより確実に

基本的なしつけとご近所との良好な関係づくり。災害時に大切なのは、こうした日常の積み重ねであることがわかりました。最後に、それらに加えて、いざ災害が起きたときに困らないよう、「事前に確認しておきたいこと」、「準備したいもの」についてまとめてみました。
災害は、自分が自宅にいるときに起きるとは限りません。災害が起きたときに、どの避難所に向かえばいいのか、誰がペットを連れてくるのか、ペットが日中留守番をしている場合、ペットの居場所は安全なのかなど、事前に確認しておきたいことはたくさんあります。さまざまなシチュエーションを想定して、どのように行動するのか、「防災の日」をきっかけに、家族できちんと話し合っておきたいですね。

日頃から確認しておきたい事柄

  • 家での家具の配置と安全な場所の確認(棚等の倒壊の恐れのない場所)
  • ペットを留守番させる場所の見直し(棚等の倒壊のない場所にサークルやケージを設置)
  • 自宅の近くの避難場所の確認(災害時の集合場所)
  • ペットと一緒に実際に避難場所まで歩いて、避難経路の確認
  • 非常持ち出し袋の用意(人間用・ペット用)

用意しておきたいペットのための防災用品

  • 3日分程度の食事と水(避難所にはペットフードの備蓄はありません)
  • トイレ用品(ペットシーツや猫砂等)
  • ケージ・リード・首輪(避難所ではペットは飼い主と離れて暮らすので、落ち着ける慣れたケージを用意)
  • 常備薬(持病のあるペットは忘れずに)
  • 鑑札・狂犬病予防注射済票の装着(犬の身元確認の手段として鑑札・狂犬病予防注射済票を。また感染症予防のために、ワクチン接種と接種証明書も用意)
  • ペットの写真複数枚(ペットが行方不明になった場合、避難所に貼り出してもらうためにも、プリントした写真を複数枚用意)
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