【監修】
竹澤康子先生(獣医師・鍼灸師)
そもそも「東洋医学」って何?
中国をはじめとする東洋の国々で発展してきた伝統的な医学のことを「東洋医学」と呼んでいます。その中には漢方薬や鍼灸(しんきゅう)、按摩(あんま)・指圧(マッサージ)などが含まれます。日本では文明開化以降、西洋医学重視の風潮となっていましたが、最近では東洋医学を中心とした東洋医学の効能・効用が見直され、エビデンス(科学的根拠)を求めた研究も多く行われるようになってきました。こうした流れもあり、病院で漢方薬を処方される機会が増えただけでなく、薬局でも多くの漢方薬が手軽に手に入るようになっています。
「東洋医学」の得意分野とは?
東洋医学は内科系の病気を得意としており、多くの内科系疾患や手術が適さない疼痛性疾患(椎間板ヘルニアなど)に効果があります。とくに、アレルギー性皮膚炎や喘息などステロイドを必要とする病気では、東洋医学を併用することでステロイドの副作用を弱めたり、その減薬が可能となったりすることがあります。
この他、病院で検査を受けたけれど、原因がとくに見当たらない、有効な治療法が見つからないといったとき、そのすべてにではありませんが、東洋医学がそれなりの効果をもたらしてくれる場合があります。
ただし、細菌や寄生虫といった感染性疾患の場合(症状の緩和・改善には役立ちますが)、基本的に西洋医学のほうが断然有効です。同様に、外科手術や緊急処置が必要な状態も西洋医学が選ばれます。
犬・猫に使用する漢方薬の種類
さて、犬・猫に使用する漢方薬にはどのようなものがあるのでしょうか。それについて説明する前に、漢方薬の基本的なお話をしましょう。
人医療で用いられるいわゆる漢方薬は、いくつかの「生薬(しょうやく)」を特定の割合で組み合わせて作られています。配合の仕方によって生薬同士の薬効が高められたり、望まぬ作用が相殺されたりしているため、様々な効果が得られるだけでなく、病状や体質にあったものであれば副作用も少ない、という特徴があります。漢方薬に使われる生薬は薬効のある自然界の植物や鉱物などが原料で、これらに乾燥させたり蒸したりと様々な加工が施されています。
犬や猫といった愛玩動物での漢方薬の使用は日本では歴史が浅く、動物用医薬品として認可されている漢方薬は未だ多くはありません。このため、犬や猫で使用する場合は、現状では多くの西洋薬と同様に人間で安全性が確認されている漢方薬が主に用いられています。漢方薬は東洋医学を治療に取り入れている動物病院で処方してもらうことが可能です。漢方薬を使ってみたい方は、まずかかりつけの獣医師に相談してみましょう。