犬と猫たちの専門医療

人の病院なら、内科や外科、皮膚科、眼科…など、専門診療科に分かれていますが、動物病院のほとんどは全科診療です。ペットがかけがえのない家族となった今日、より高度な専門医療を求める飼い主さんも増えてきているのではないでしょうか。そこで、今、獣医療の「専門化」はどのように進んでいるのか、調べてみました。

2011年11月2日RSSRSS

獣医療の分野での「専門医」資格とは?

求められる高度な専門医療

動物病院のほとんどは、地域に密着した「かかりつけ医」です。人の医療なら、かかりつけ医でも専門の診療科目に分かれていますが、動物の場合は、内科、外科はもちろん、整形外科、皮膚科、眼科、歯科に至るまで、通常、すべての病気を一つの病院で診療します。

「MRI検査は?」「白内障の手術は?」「放射線治療は?」・・・、飼い主さんは、ペットに人並みの治療を求めるようになってきています。しかし、そんな声に応えて、かかりつけ医が自前ですべての治療分野に対応できるような技術や設備をもつことは難しいことです。
そこで、一次診療を担うかかりつけ医にとっても、ペットにできる限りの治療を受けさせたいと願う飼い主さんにとっても、必要に応じて、より正確な診断が下せる専門医、より高度な検査・治療が行える専門病院が求められるようになってきたといえます。

欧米では、獣医師専門医の制度があります。一定のレジデント(研修)プログラムを修了し、その間の臨床経験症例数、学会活動、論文業績等の条件を満たしたうえで、専門医認定団体が実施する試験に合格して、初めて専門医として認められます。
さらに、その専門医団体の代表者からなる組織が存在し、専門医制度そのものを統括。当該分野の専門医の必要性、数、受験資格、認定試験の妥当性などについても十分に検討し、専門医のレベルや信頼性を担保する役割を果たしています。
日本には、今のところ、そういう意味での「専門医」制度はありません。

学会などの団体が「認定医制度」を導入

現在、日本の獣医療の領域でも、腫瘍科認定医、循環器認定医、眼科学専門医…等々、「専門医」や「認定医」と呼ばれる資格があります。それらは各専門分野の学会や研究会が導入している認定医制度で、下記のようなものがあります。
その多くは講習会受講と試験の組み合わせで、認定を受けます。その分野に関する専門知識や最新の治療法などを学んでいるという観点からは、動物病院や獣医師選びの一つのめやすにはなるでしょう。

一方、本格的な専門医制度の確立をめざした新しい試みも始まっています。獣医麻酔外科学会(小動物外科専門医協会)では、2年間の臨床経験のある獣医師を対象に、協会が認める研修施設において専門医の指導の下に、3年間の「小動物外科レジデントプログラム」に従事。修了後、試験に合格すれば専門医の認定が受けられるシステムです。レジデントプログラムは、平成21年にスタートしたばかりなので、成果はまだこれからでしょう。

各学会が導入している認定医制度
日本獣医がん学会 II種:当学会の会員で、認定委員会で推薦され、所定の審査に合格。もしくは認定制度で定めた講習会を受講し、筆記試験に合格すれば「獣医腫瘍科認定医II種」に。
I種:II種資格を有し、認定委員会が行う口述・実技試験等に合格すれば「獣医腫瘍科認定医I種」に。※4年毎に更新が必要。
日本獣医循環器学会  会員歴5年以上および41講座ある認定講習会のうち33講座以上の履修、論文掲載や学会活動、受け持ち循環器症例30例の報告などが受験資格。合格すれば「動物循環器認定医」に。※5年毎に更新が必要。
JAHA(日本動物病院福祉協会)  認定資格は「内科」「外科」の2種類。6年以上の臨床経験、内科・外科とも、8科目の指定セミナーの受講、学会発表または論文発表の実績が受験資格。筆記試験と面接試験に合格すれば「JAHA認定医」に。※8年毎に更新が必要。
獣医麻酔外科学会(日本小動物外科専門医協会) 2年間の臨床経験の後、当協会が認める研修施設で3年間の「小動物外科レジデントプログラム」に従事し、修了後、認定試験に合格すれば「日本小動物外科専門医」に。すでに小動物外科医として実績のある獣医師については研修免除制度あり。
日本獣医皮膚科学会 当学会の会員で、講習会研修科目を修了、以下6年以内に、学会主催の学術事業参加修了証を3年分有し、海外皮膚科学会に1回以上参加、学会で筆頭演者として1報以上発表、論文を筆頭著者として1編以上発表、臨床医であることが申請資格。筆記試験と口頭試問に合格すれば「日本皮膚科学会認定医」に。※3年毎に更新が必要。
比較眼科学会 会員歴3年以上、基礎眼科学研究に5年以上従事、論文投稿・学会発表・各種教育の受講等で一定以上の実績があることが受験資格。口頭・筆記・実地による試験に合格すれば「獣医眼科学専門医」に。※5年毎に更新が必要。
日本小動物歯科研究会

講義と実習によるレベル認定制度(難易度に応じてレベル1~4まで)

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