多くの犬猫の犠牲が、「ペットフード安全法」成立の引き金に
中国産メラミン混入ペットフードによる被害
今から4年前、平成19年春に、アメリカで極めて多数の犬や猫が腎不全を発症したり、死亡したりする事例が報告されました。これを受けた米国食品医薬品庁(FDA)は、調査により、中国の会社が製造した小麦グルテンや米たんぱく質を原材料としたペットフードが原因であることを突き止めました。これらの小麦グルテンや米たんぱく質には、たんぱく質量を多く見せかけるためにメラミンが違法に混入されていたのです。
その後の研究で、メラミンとメラミン化合物であるシアヌル酸の化学反応によって出来た結晶により、腎臓の機能に障害が生じたと推測されています。このメラミン混入ペットフードが原因で死亡・または深刻な健康被害を受けた犬や猫の数は、数千頭にものぼるといわれています。
日本国内での不安が高まる
同じ年の6月、米国で回収対象となっていたペットフードが、並行輸入により日本国内でも流通していたことが明らかとなりました。販売業者の自主回収により、メラミン混入ペットフードを原因とした健康被害が出ることはありませんでしたが、ペットフードの安全性に対する国民の不安はますます高まることとなりました。実際このときには、たとえペットフードに問題があっても、その製造や流通を規制できる法律がなかったのです。
これまで日本では、「飼料の安全性確保及び品質の改善に関する法律」によって動物用飼料の規格や基準が定められてきましたが、この法律で対象となるのは、家畜(人間が食用とする動物)のみで、犬や猫といったペットは含まれていませんでした。ペットフードの安全は、業界団体による自主的な取り組みでのみ、守られてきたのです。
ペットフード安全法誕生へ向けて
こうした問題をきっかけにして、政府内ではペットフードの安全を確保するための法規制の必要性が議論され、農林水産省及び環境省が共同で、有識者からなる「ペットフードの安全確保に関する研究会」を設置、協議が重ねられました。その結果、ペットの生命の保護及び健康被害の防止という動物愛護の観点から、ペットフードの安全確保が緊急課題であり、強制力のある法規制導入が必要であるという取りまとめを受けて、法制化が進められることとなりました。
こうして誕生したのが、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」いわゆるペットフード安全法で、平成21年6月1日より施行されました。欧米では、家畜飼料と同じ法律の中で規制が設けられていますが、ペットフードに特化した法律が制定されたのは世界で初めてのこととなります。