取材を終えて―
正解はなく、あるのは「判断」だけ
今回の記事のために、取材をしたり、文献を調べたりするなかで、放射線の影響について、専門家ですらさまざまな意見に分かれているのは、それぞれの専門分野の違いで評価基準が違ってくるためだということがわかりました。
リスクを限りなくゼロに近づける放射線管理の目的においては、より安全な考えに基づいて通常時の基準(年間1ミリシーベルト)が決められています。また、医学・生物学の分野から考えると、しきい値(100ミリシーベルト)を超えない低線量では、有意な差が確認されていないという事実から、評価が行われています。
この違いが、報道でよく取り上げられているような、年間1ミリシーベルト、20ミリシーベルト、100ミリシーベルトという基準値の相違となって表れているのでしょう。一般の私たちには詳しい説明がないため、それが不安の原因となりました。
一方で、100ミリシーベルト以下の被曝が癌を発症させるデータもない代わりに、低線量の被曝は100%安全というデータがあるわけでもないため、「ただちに健康に害はない」という表現が使われ、「今は大丈夫でも、いつか害が出るということか」と、さらに不安を引き起こすことになりました。
現在の被曝量を無視できるリスクと考え、ペットにストレスのない生活を優先させるのか。あるいは、少々の我慢はさせても、放射線のリスクを徹底的に排除したいと考えるのか。正解はありません。飼い主さん自身がそれぞれの判断基準をもって決めるしかないのです。
人まかせにせず、風評に振り回されず、何を一番大切だと考えるのか―放射線への対処姿勢は、実は私たち自身の生き方にもつながっているのかもしれません。