【取材協力】
日本ウォーターワーク協会 インストラクター 濱田由美子さん
http://homepage.mac.com/drhiroo/Sites/JWWA/index.html
ウォーターワーク講習会で楽しく「ドッグ・スイミング」
講習会のインストラクターと参加犬を紹介
和歌山県の田辺市を本拠に関西各地でウォーターワーク・インストラクターとして活躍する濱田由美子さんを訪ねた。濱田さんは、初夏から秋にかけて、琵琶湖や和歌山の川や海を舞台にウォーターワーク講習会を開催。泳ぎの苦手な犬には水遊びの楽しさを、泳げる犬には、いざという時に役に立つ水難救助の基本を実地トレーニングしている。
本日の講習犬は、田辺市近くの上富田町に住む状書 香さんと「ミルク」のペア。状書さんは、捨て犬や捨て猫の保護と里親探しを行うNPO法人「ワンニャン会」のメンバー。ミルクは老人ホーム理事長の愛犬で、泳ぎが得意なはずのゴールデンなのに泳ぎが不得意。「せっかくゴールデンに生まれたのだから、泳げるようにしたい」との思いからスイミングに挑戦させ、泳げるようにしたばかりだ。実を言えば、模範演技をする濱田さん宅の犬の中の1頭、ラブラドールの「福助」は、この春、徳島で保護された元捨て犬で、近々新しい家族のところへ行くという。「この子は、飛び込みが得意で」と濱田さんはほほ笑んだ。
いよいよドッグ・スイミングに挑戦!
近くを流れる富田川の河原に来た。ウェットスーツに着替えた濱田さんが水中に入り、ミルクを呼ぶ。まだ足の着かないところが怖いミルクは、前足を水に浸けただけで、立ち止まる。「無理に入れようとすると逆効果。初めは水際で遊んでやり、少し水に慣れたころ、おやつを使って優しく呼ぶんです」。こわごわ川に入ったミルクは、ドボンドボンと音を立てて前足で水をかく。濱田さんが片手でおなかを支えると、沈みがちだった腰が安定して、うまく泳ぎ始めた。
一方、飛び込みの得意なラブの福助は、川岸でしっぽを大きく振って、待機する。濱田さんが川面にダンベル形の水に浮くおもちゃを投げ入れると、2、3歩水に入った後、大きくジャンプして、ゆっくり流れるおもちゃに向かって泳いで行った。
次は、水泳が大好きなアイリッシュセターの「十兵衛」の番。 スイスイ泳ぐ十兵衛の背中につかまりながら、 「これが気持ち良くて」と濱田さん。最後は、川に投げ込まれた浮き輪を取って、十兵衛はいそいそと濱田さんのところへ。十兵衛は、もともと股関節形成不全がひどくてヨタヨタとしか歩けず、動物病院で手術も無理と言われたほどだった。リハビリのために濱田さんが泳ぎを教え、前足だけで水をかいているうちに筋肉がつき、次いで弱い後ろ足も動かせるようになり、今では普通に歩いたり走ったりできるまでになった。
ドッグ・スイミングを始める前に、押さえておきたいこと
濱田さんによれば、ドッグ・スイミングの基本形は「水難救助」で、おぼれかけた人に浮き輪やロープを届けたり、背中につかまらせて岸に連れて来たりという形を取り入れて、カリキュラムが作られているとのこと。「実際には、水難救助はニューファンドランド犬みたいな大型犬じゃないと難しいのですが、中・小型犬でも、飼い主さんと一緒に楽しく水遊びしてほしいですね」
ただし、泳ぎはノーリードが基本なので、陸上でのトレーニングがとても重要だと濱田さんは言う。水の中で「来い!」と呼びかけても来なかったり、ボールやダンベルを投げてもくわえてこなかったりすればどうしようもない。でも心配はない。飼い主と愛犬とのきずながあり、何をしてほしいか伝えることができれば、大丈夫。「あとは犬の個性、性格を見極め、それぞれの犬に合った、無理のないやり方で徐々に慣らしていけば、ほとんどの犬は泳げるようになります」
一般に、柴犬などの和犬系統は水嫌いが目立ち、洋犬系統は水遊びが好きな犬がほとんど。しかし、ピンシャーやイタリアングレイハウンドなどのスムースコート系は皮膚が冷えるので水嫌いが多い。また、レトリーバー種などでも水が苦手な犬もいる。最初に、飼い主が岸からボールを水に投げ入れて、無理に飛び込ませたりすると、水嫌いがなかなか直らないとか。また、ダックスやコーギーなど短足犬種には泳ぎの不得意な犬もいるので、「犬用ライフジャケットを着用して練習を始めるといいでしょう」と濱田さんはつけ加えた。