狂犬病は日本国内で久しく発生していない。そのため、狂犬病感染は対岸の火事と捉えられがちだが、世界中で依然猛威をふるっており、毎年5万人以上が死亡している。厚生労働大臣が狂犬病清浄地域と指定した国は、日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなど極めて少なく、ほとんどの国で狂犬病に感染する可能性がある。
特にアジアを中心とした地域で発生が多く確認されているが、北米、欧州の一部地域でも感染の恐れがある。海外に渡航、滞在する人は、以下の点にくれぐれも留意を。
【狂犬病について】
- 感染源
犬をはじめ、猫、イタチ等の哺乳動物(北米ではアライグマ、スカンク、コウモリ、欧州ではキツネ、アフリカではジャッカルやマングース、その他、牛や馬など)。おもに感染動物に咬まれることで、唾液中に存在するウイルスが傷口から体内に侵入する。 - 症状
人の場合、潜伏期間は一般に1~3カ月ほど。発熱、頭痛、嘔吐などがまず現れ、痙攣(けいれん)、幻覚、水を飲むとのどが痙攣を起こす(恐水症)など段階を経て、よだれを大量に流し、昏睡、呼吸麻痺に。発症するとほぼ100%死亡する。 - 予防方法
海外では動物にむやみに手を出さず、多量のよだれを垂らすなど、具合の悪そうな動物には近づかないように。また、狂犬病ワクチンの予防接種を受けること。 - 感染している恐れのある動物に咬まれてしまったら
すぐに十分にせっけんで水洗いをした後、ただちに医療機関で傷口の治療をし、ワクチン接種を実施。帰国後は、現地の医療機関での受診の有無にかかわらず、検疫所(健康相談室)に相談すること。