ニュースレターによると、ペットオーナーが適切なしつけを行うことで、しつけを受けたペットを飼育することのメリットが社会全体に認識されて、人とペットが共生する社会への理解が進むという。
社団法人日本動物福祉協会の山口千津子獣医師は「ペットオーナーがしつけについて考えるとき、まずしっかりと理解すべきことは何か」という問いに対して、「すべてをペットに我慢させることがしつけではないということ」と答えている。
では、しつけとは何かというと、「『動物の5つの自由』を守ることを前提としたうえで、人とペットが一緒に幸せに暮らすための最低条件としてのルールを、 ペットにも理解してもらうこと」だと述べている。「動物の5つの自由」は、ペットを飼育するうえで重要な指針として世界中で知られる、人と暮らす家畜や動 物に最低限保障されるべき自由の定義。
【動物の5つの自由】
- 飢えや渇きからの自由(健康維持のために適切な食事と水を与える)
- 不快からの自由(温度、湿度など、それぞれの動物にとって快適な環境を作る)
- 痛みからの自由(怪我や病気から守り、病気の場合には十分な獣医医療を施す)
- 恐怖・抑圧からの自由(過度なストレスとなる恐怖や抑圧を与えず、それらから守る)
- 自然な生態行動ができる自由(各動物の生態・習性に従った自然な行動が行えるようにしてあげる)
山口獣医師は、しつけについて話す際、2つの目的のために、飼育に関する基本として「5つの自由」に必ず言及するという。
目的の1つは、ペットも人間と同じように痛みを感じ、感情をもつ、命ある存在であることを理解してもらうため。もう1つは、ペットを家族や社会の仲間とし て迎えるには、互いに心地よく暮らせる最低限のルールが必要だということを、聞き手に改めて気付かせるため。つないだまま、アクセサリー感覚、過剰に甘や かすなどの飼い方は、ペットとともに暮らしているとはいえない。
実際に、「5つの自由」の認知が高い英国では、犬のしつけが行き届いた結果、犬も社会で市民権を得て、社会における共生と住み分けが進んでいる。ペット オーナーたちは、ペットはともに暮らす仲間であるとの認識を強く持ち、社会の一員としてしつけ、育てることの重要性について自然に理解しているという。
ペットのしつけは、ただ人間社会のルールを押し付けることではなく、ペットの立場に配慮することから始まり、社会の仲間として迎える意味を知ることがとても重要。このことはオーナーの意識の持ち方と合わせて、改めて考えてみる価値があるといえる。