これまでSFTSウイルスを媒介するのはマダニであり、動物から人への感染は起こらないとされてきた。しかし今回の事例では、女性がマダニに咬まれた形跡はなく、猫を介して感染したとのこと。動物から人への感染が実際に確認されれば、ズーノーシス(人獣共通感染症)として初の事例となる。
国立感染症研究所によれば、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」による死亡例は50代以降の中高齢者に多く、症例の届出があった地域でいえば近畿以西の西日本がほとんどである。感染すると6日~2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない。(出典:NID 国立感染症研究所「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」)
なお、厚生労働省は、体調のすぐれない飼育猫および飼育犬からSFTSウイルスが確認された事例もあわせて発表し、注意喚起している。とはいえ、猫から人への感染が疑われる今回のケースは稀な事例である。マダニ媒介性疾患の予防は、ペットウェルでも度々お伝えしているが、一には草むらを歩く際に肌を露出しないことであり、犬を飼っているのであれば愛犬のマダニ予防をきちんと行うことだ。
その他、マダニの生体やマダニが媒介する犬の感染症については、以下にご紹介する特集ページが詳しいので、ぜひ夏場のマダニ対策にご一読いただければと思う。