犬も長寿・高齢化の時代、心臓病(心不全)を患う犬が増えています。
心臓はきわめて丈夫な臓器で、生涯休むことなく伸縮をくり返し、酸素を含んだ新鮮な血液を体じゅうに送り込む、とても重要な役割をもっています。心臓は右心房・右心室・左心房・左心室の四つからなっていて、その構造は人も犬も同様です。しかし、犬は心臓病になりやすく、先天性の心臓疾患や、老犬に多くみられる後天性の心臓疾患など、さまざまな原因で起こる心臓病があります。
後天性の機能障害による心臓病 | 僧帽弁閉鎖不全症、感染性心内膜炎など |
---|---|
心筋疾患による心臓病 | 心筋症、心肥大、心筋梗塞など |
先天性の欠陥による心臓病 | 心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、大動脈狭窄症、肺動脈狭窄症など |
そのほかの異常による心臓病 | フィラリア症(犬糸状虫症)など |
犬の心臓病のなかでとくに目立つのが、僧帽弁閉鎖不全症です。室内で小型犬を飼う人や長生きする犬が多くなったことで増加している病気で、犬の心臓病の7~8割を占めるといわれています。遺伝的な要因もあり、たとえば6~7歳以上のマルチーズやヨークシャー・テリア、ポメラニアンなどの小型犬に、コンコンといった空咳がみられる場合には、この心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)の可能性が高いと考えられます。
心筋(心臓を構成している筋肉)の異常による心臓病として、心筋症や心肥大、心筋梗塞などがあります。犬の心筋症で多いとされるのは特発性の心筋症で、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、グレート・デーン、ドーベルマン、ボクサーなどの大型犬に多くみられます。心肥大は、大動脈狭窄症や肺動脈狭窄症などの先天性の心臓病や肥満が原因で起こります。心筋梗塞は、肥満や甲状腺機能低下症などが原因となりますが、犬に発症するケースはまれです。
先天性の欠陥による心臓病としては、心室中隔欠損症や心房中隔欠損症、大動脈狭窄症、肺動脈狭窄症、動脈管開存症などがあります。これらの病気はとくに目立った初期症状がみられないこともあって、飼い主が気づくのは困難です。発見・診断には聴診や心電図検査、X線検査、超音波検査などが必要となります。
決して油断ならないのが、フィラリア症(犬糸状虫症)による心臓病です。予防薬の定期投与によるフィラリア予防はずいぶん定着していますが、それでも一時的に投薬を怠っていたり、忘れていたりすれば感染する恐れがあります。フィラリア症の感染初期はとくに目立った症状はなく、少しずつ咳や呼吸困難などの症状が現れるようになります。
コンコンといった空咳、疲れやすい・・・それらは心臓病の代表的な症状です。
心臓の機能が低下すると、必要な量の血液を正常に送り出せなくなり、さまざまな症状が現れます。主にみられるのが、コンコンといった乾いた咳や息切れ、運動不耐性(すぐに疲れ、運動を嫌がること)などです。愛犬にこのような症状がみられれば、すぐに動物病院へ連れて行くべきです。もしも、一日じゅう咳が止まらない、散歩中にすぐに疲れて座り込み、歩こうとしないなどの様子がみられる場合には、残念ながら心臓病がかなり進行している恐れがあります。
犬の心臓病の主な症状 | 乾いた空せきが止まらない、息が荒い(呼吸が苦しそう)、疲れやすい、運動を嫌がる、血を吐く(フィラリア症の場合)など |
---|
犬の心臓病の治療は難しく、その種類や症状によっても異なります。以前であれば強心薬などの投与が治療の基本でしたが、近年ではなるべく安静に努め、塩分控えめの食事療法をおこないながら、血管拡張薬などを用いて心臓の負担を減らし、心臓病の進行を遅らせる治療をおこなうケースが増えています。いずれにしても、心臓病の治療は根気よく続ける必要があります。愛犬の症状を見ながら、獣医師とよく相談して治療を続けるようにしましょう。
犬の心臓病については、以下をご覧ください。