かゆみや発疹、脱毛を引き起こすノミ・マダニ。命に関わるフィラリアなど。
寄生虫とは、別の動物の体内や体表に住みついて生活し、その動物から栄養を吸収し、生きる生物のことをいいます。犬にうつる寄生虫には2つのグループがあります。宿主の体表、つまり皮膚の表面や皮下にとどまる「外部寄生虫」と、宿主の体内、つまり腸管やそのほかの臓器にとどまる「内部寄生虫(おなかの虫)」です。
犬にうつる外部寄生虫には、ノミ、マダニ、アカラス(ニキビダニ、毛包虫)、疥癬(ヒゼンダニ)、ツメダニなどがいます。ノミは6本足を持つ昆虫で、ダニは8本足を持つクモの仲間。種類の異なる生き物ですが、いずれも犬の皮膚に寄生して被毛やフケ、皮膚を咬んで食べるなどして生活します。一方、犬にうつる内部寄生虫(おなかの虫)には、フィラリア(犬糸状虫)や回虫、条虫(サナダムシ)、鉤虫(こうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)、原虫(げんちゅう:単細胞の寄生虫)などがいます。いずれも腸管などの臓器に寄生し、宿主が消化した栄養を吸収して生活します。
ノミアレルギー性皮膚炎 | ニキビダニ(体長約2~3ミリ)の寄生によって発症する。耳の穴や顔に脱毛がみられる。 |
---|---|
アカラス症 (ニキビダニ症、毛包虫症) |
ニキビダニ(体長約2~3ミリ)の寄生によって発症する。耳の穴や顔に脱毛がみられる。 |
疥癬 | ヒゼンダニ(体長約0.1~0.3ミリ)が、皮膚に穴を掘って寄生することで発症する。耳やひじ、顔のまわりに激しいかゆみ、脱毛や発疹などがみられる。 |
ツメダニ症 | イヌツメダニ(体長約0.5ミリ)の寄生によって発症する。かゆみは弱く、かさぶたのようなフケが多くなる。 |
耳ダニ感染症 (耳疥癬、ミミヒゼンダニ感染症) |
イヌミミヒゼンダニ(体長約0.3~0.4ミリ)が、外耳道に寄生することによって発症する。かゆみから頭をしきりに振ったり、耳を掻きむしり、ひどくなると耳血腫や外耳炎を併発する。 |
回虫症 | おもに犬回虫が小腸に寄生することで発症する。子犬に感染した場合、下痢や嘔吐、体重低下、発育不良などがみられる。ただし、成犬ではほぼ無症状。 |
---|---|
瓜実条虫症(犬条虫症) | 瓜実条虫に大量の寄生を受けた場合に発症する。下痢や食欲低下などを引き起こす。ノミが媒介し、毛づくろいでノミを口に入れてしまった際などに、犬に感染する。 |
マンソン裂頭条虫症 | マンソン裂頭条虫の寄生によって発症する。感染はカエルやヘビなどを捕まえて口に入れたときなどに起こる。下痢などを引き起こすが、無症状のケースも多い。 |
鉤虫症 | 鉤虫の寄生によって発症する。下痢や血便、貧血などがみられる。 |
フィラリア症(犬糸状虫症) | フィラリア(蚊が媒介)の寄生によって発症する。感染初期は無症状だが、やがて咳や呼吸困難など心臓病と似た症状があらわれ、やがて死に至る。 |
鞭虫症 | 犬鞭虫の寄生によって発症する。おもに下痢や血便がみられる。 |
糞線虫症 | 糞線虫の寄生によって発症する。おもに下痢、とくに子犬に感染した場合にはひどい下痢や体重低下、発育不良などがみられる。 |
コクシジウム症 | コクシジウムという原虫の寄生によって発症する。下痢や血便などがみられる。 |
ジアルジア症 | ジアルジアという原虫の寄生によって発症する。子犬に感染した場合、下痢や体重低下、発育不良などが起こる。ただし、成犬ではほぼ無症状。 |
バベシア症 | バベシアという原虫の寄生によって発症する。重い貧血や高熱、血尿などを引き起こす。バベシア原虫を媒介するマダニに寄生・吸血されることで感染する。 |
トキソプラズマ症 | トキソプラズマという原虫の寄生によって発症する。急性または慢性的に下痢や発熱、呼吸困難、痙攣などの症状を引き起こす。 |
なかには人間に感染する寄生虫も。愛犬への定期駆虫が予防として大切です。
犬の寄生虫は犬だけに感染するとは限りません。なかには猫や人間にも感染して、害を与えるものがあります。そのため愛犬に寄生虫が見つかった場合は、すみやかに駆除をおこなうことが大切です(多頭飼いの場合はほかの犬にも駆除をおこないます)。たとえば回虫は、幼児に感染して発熱や咳、視力障害などを引き起こします。これは感染した犬から排泄される虫卵が幼児の指先に付着、おしゃぶりなどで口に入るといったパターンで感染します。このように、動物と人間の間で共通して感染する病気を、ズーノーシス(人畜共通感染症、ペット感染症)と呼びます。
ズーノーシスとなる犬の寄生虫による病気に注意点を挙げるなら、犬に感染しても無症状や軽症であることが多く、飼い主が感染に気がつかないケースがあることです。そのため知らない間に寄生虫が繁殖し、家族に感染が広がることがあります。また、室内飼いの場合でも油断は禁物。お散歩のときに放置ウンチに鼻を近づけたり、草むらを歩いたりした際に寄生虫をもらってくることがあります。まずは愛犬を寄生虫の感染から予防することが大切です。
寄生虫の感染を予防するには、飼育環境を清潔に保ち、駆虫薬を定期的に投与します。ただし、寄生虫の駆虫薬は、市販薬と動物病院の処方薬とでは効果や安全性が大きく異なります。また、犬の年齢や体重、寄生虫の種類によって、効果や投与量も異なります。きちんと動物病院で診察を受けたうえで、適切な治療をおこなうようにしましょう。
犬の寄生虫による病気については、以下をご覧ください。