かゆみや発疹、脱毛などを引き起こすノミ・ダニ。下痢や発育不良はおなかの虫。
寄生虫とは、別の動物の体内や体表に住みついて生活し、その動物から栄養を吸収し、生きる生物のことをいいます。一方で、寄生虫から寄生を受ける動物のことを宿主(しゅくしゅ)と呼びます。猫にうつる寄生虫には2つのグループがあります。宿主の体表、つまり皮膚の表面や皮下にとどまる「外部寄生虫」と、宿主の体内、つまり腸管やそのほかの臓器にとどまる「内部寄生虫(おなかの虫)」です。
猫にうつる外部寄生虫には、ノミ以外にもハジラミ、疥癬(ヒゼンダニ)、耳に寄生する耳疥癬(ミミヒゼンダニ)、ニキビダニ(毛包虫)などがいます。いずれも猫の皮膚に寄生して被毛やフケ、皮膚を咬んで食べるなどして生活します。一方、猫にうつる内部寄生虫には、回虫や条虫(サナダムシ)、フィラリア(犬糸状虫)、鉤虫(こうちゅう)などに加え、吸虫や原虫(げんちゅう:単細胞の寄生虫)などがいます。いずれも腸管などの臓器に寄生し、宿主が消化した栄養を吸収して生活します。
ノミアレルギー性皮膚炎 | おもにネコノミ(体長約2~3ミリ)の寄生によって発症する。首や背中などに、ひどいかゆみや脱毛がみられる。 |
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疥癬(ヒゼンダニ症) | おもにネコショウセンコウヒゼンダニ(体長約0.1~0.3ミリ)が、皮膚に穴を掘って寄生することで発症する。かゆみがひどく、顔や耳、目の回りに脱毛や化膿などがみられる。 |
耳ダニ感染症(耳疥癬、ミミヒゼンダニ感染症) | おもにミミヒゼンダニ(体長約0.3~0.4ミリ)が、外耳道に寄生することによって発症する。かゆみから頭をしきりに振ったり、耳を掻きむしり、ひどくなると耳血腫(耳介血腫)や外耳炎を併発する。 |
ツメダニ症 | ツメダニ(体長約0.4~0.5ミリ)の寄生によって発症する。かゆみは弱く、フケが多くなる。 |
ニキビダニ症(毛包虫症) | ニキビダニ(体長約2~3ミリ)の寄生によって発症する。耳の穴や顔に脱毛がみられる。ただし、猫の発症はまれ。 |
回虫症 | 猫回虫(体長3~10センチ)が小腸に寄生することで発症する。子猫に感染すると症状が重い傾向があり、下痢や体重低下、発育不良などがみられる。 |
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瓜実条虫症 | 瓜実条虫の寄生によって発症する。下痢や体重低下などを引き起こす。ノミが媒介し、毛づくろいでノミを口に入れてしまった際などに、猫に感染する。 |
条虫症 | 猫条虫の寄生によって発症する。下痢や食欲不振などを引き起こすが、無症状のケースがほとんど。 |
マンソン裂頭条虫症 | マンソン裂頭条虫の寄生によって発症する。カエルやヘビなどを捕まえて、口に入れたときなどに感染する。下痢などを引き起こすが、無症状のケースがほとんど。 |
鉤虫症 | 鉤虫の寄生によって発症する。下痢や貧血などの症状を発症する。 |
フィラリア症(犬糸状虫症) | フィラリア(蚊が媒介)の寄生によって発症する。犬のフィラリアよりも重い症状を引き起こすことがあり、嘔吐や咳、呼吸困難などの症状のほかに、突然死をまねくことがある。 |
壷型吸虫症 | 壷型吸虫(体長約2ミリ)の寄生によって発症する。カエルなどを捕まえて口に入れたときに感染する。おもな症状は下痢など。 |
コクシジウム症 | コクシジウムという原虫の寄生によって発症する。下痢や血便などがみられる。 |
トキソプラズマ症 | トキソプラズマという原虫の寄生によって発症する。多くの猫は感染してもほぼ無症状だが、免疫力や体力の弱い子猫の場合、下痢や血便、発熱、せき、呼吸困難などの症状が現れることがある。 |
寄生虫が見つかればすぐに駆虫を。定期駆虫で予防に努めましょう。
猫に寄生したノミは、温暖な部屋のなかであれば約1~2カ月で成虫に成長し、あっという間に繁殖します。ネコノミは犬にも感染します。そのため1匹の猫に感染が見つかった場合は、同居するすべての猫や犬に駆除をおこなう必要があります。また、回虫などの内部寄生虫は、母猫から子猫に感染するケースが多く、しばしば重い症状を引き起こします。そのため子猫には生後4週齢からの定期的な駆虫が推奨されています。なお、フィラリア症(犬糸状虫症)は犬の病気のイメージが強いですが、じつは猫にも感染します。突然死をまねくことがあるので、何より予防が大切です。
猫に感染する寄生虫には、ズーノーシス(人畜共通感染症、ペット感染症)として、人間にも害を与えるものがあります。たとえば回虫は、幼児に感染して発熱や咳、視力障害などを引き起こします。これらの病気にならないようにするには、愛猫に定期的に駆虫薬を投与して、普段から予防に努めることが大切です。ただし、寄生虫の駆虫薬は、市販薬と動物病院の処方薬とでは、効果や安全性に大きな違いがあります。また、猫の年齢や体重、寄生虫の種類によって、効果や投与量も異なります。きちんと動物病院で診察を受けたうえで、適切な治療をおこなうようにしましょう。
回虫症 | 虫卵が口に入ることで人に感染。幼児に発症しやすく、発熱や咳、視力障害などを引き起こす。 |
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瓜実条虫症 | 媒介するノミが口に入ることで人に感染。幼児に発症しやすく、下痢を引き起こす。 |
鉤虫症 | 幼虫が皮膚を破って侵入することで人に感染。皮膚炎を引き起こす。 |
ツメダニ症 | 感染猫との接触で人に感染。皮膚炎を引き起こす。 |
疥癬(ヒゼンダニ症) | 感染猫との接触で人に感染。皮膚炎を引き起こす。 |
ノミ刺咬症 | 感染猫との接触で人に感染。吸血されると激しいかゆみを引き起こす。 |
トキソプラズマ症 | 感染猫の糞便と一緒に排泄されたオーシスト(卵)が、口に入ることで人に感染。妊娠中や抵抗力が落ちている人に、流産や神経症状などの重い症状を引き起こす。 |
エキノコックス症 | 感染猫の糞便と一緒に排泄された虫卵が、口に入ることで人に感染。長い潜伏期間を経て重い肝機能障害を起こし、放置すれば命に関わる。ただし、猫の場合はほぼ無症状。 |
猫の寄生虫による病気については、以下をご覧ください。