猫の寄生虫による病気とは?症状・駆除・予防法など

ノミがうつり、ポリポリとかゆがる愛猫を見るのはツライもの。猫を飼ううえでノミ退治は欠かせません。このように猫の寄生虫といえば「ノミ」が真っ先に浮かびますが、猫に感染して病気を引き起こす寄生虫は、ほかにもたくさん存在します。ここでは猫にうつる寄生虫について、その種類や感染したときに起こる病気(症状)などをご紹介します。

2009年6月2日RSSRSS

かゆみや発疹、脱毛などを引き起こすノミ・ダニ。下痢や発育不良はおなかの虫。

寄生虫とは、別の動物の体内や体表に住みついて生活し、その動物から栄養を吸収し、生きる生物のことをいいます。一方で、寄生虫から寄生を受ける動物のことを宿主(しゅくしゅ)と呼びます。猫にうつる寄生虫には2つのグループがあります。宿主の体表、つまり皮膚の表面や皮下にとどまる「外部寄生虫」と、宿主の体内、つまり腸管やそのほかの臓器にとどまる「内部寄生虫(おなかの虫)」です。

猫にうつる外部寄生虫には、ノミ以外にもハジラミ、疥癬(ヒゼンダニ)、耳に寄生する耳疥癬(ミミヒゼンダニ)、ニキビダニ(毛包虫)などがいます。いずれも猫の皮膚に寄生して被毛やフケ、皮膚を咬んで食べるなどして生活します。一方、猫にうつる内部寄生虫には、回虫や条虫(サナダムシ)、フィラリア(犬糸状虫)、鉤虫(こうちゅう)などに加え、吸虫や原虫(げんちゅう:単細胞の寄生虫)などがいます。いずれも腸管などの臓器に寄生し、宿主が消化した栄養を吸収して生活します。

猫にうつる外部寄生虫【病気とおもな症状】
ノミアレルギー性皮膚炎おもにネコノミ(体長約2~3ミリ)の寄生によって発症する。首や背中などに、ひどいかゆみや脱毛がみられる。
疥癬(ヒゼンダニ症)おもにネコショウセンコウヒゼンダニ(体長約0.1~0.3ミリ)が、皮膚に穴を掘って寄生することで発症する。かゆみがひどく、顔や耳、目の回りに脱毛や化膿などがみられる。
耳ダニ感染症(耳疥癬、ミミヒゼンダニ感染症)おもにミミヒゼンダニ(体長約0.3~0.4ミリ)が、外耳道に寄生することによって発症する。かゆみから頭をしきりに振ったり、耳を掻きむしり、ひどくなると耳血腫(耳介血腫)や外耳炎を併発する。
ツメダニ症ツメダニ(体長約0.4~0.5ミリ)の寄生によって発症する。かゆみは弱く、フケが多くなる。
ニキビダニ症(毛包虫症)ニキビダニ(体長約2~3ミリ)の寄生によって発症する。耳の穴や顔に脱毛がみられる。ただし、猫の発症はまれ。
猫にうつる内部寄生虫【病気とおもな症状】
回虫症猫回虫(体長3~10センチ)が小腸に寄生することで発症する。子猫に感染すると症状が重い傾向があり、下痢や体重低下、発育不良などがみられる。
瓜実条虫症瓜実条虫の寄生によって発症する。下痢や体重低下などを引き起こす。ノミが媒介し、毛づくろいでノミを口に入れてしまった際などに、猫に感染する。
条虫症猫条虫の寄生によって発症する。下痢や食欲不振などを引き起こすが、無症状のケースがほとんど。
マンソン裂頭条虫症マンソン裂頭条虫の寄生によって発症する。カエルやヘビなどを捕まえて、口に入れたときなどに感染する。下痢などを引き起こすが、無症状のケースがほとんど。
鉤虫症鉤虫の寄生によって発症する。下痢や貧血などの症状を発症する。
フィラリア症(犬糸状虫症)フィラリア(蚊が媒介)の寄生によって発症する。犬のフィラリアよりも重い症状を引き起こすことがあり、嘔吐や咳、呼吸困難などの症状のほかに、突然死をまねくことがある。
壷型吸虫症壷型吸虫(体長約2ミリ)の寄生によって発症する。カエルなどを捕まえて口に入れたときに感染する。おもな症状は下痢など。
コクシジウム症コクシジウムという原虫の寄生によって発症する。下痢や血便などがみられる。
トキソプラズマ症トキソプラズマという原虫の寄生によって発症する。多くの猫は感染してもほぼ無症状だが、免疫力や体力の弱い子猫の場合、下痢や血便、発熱、せき、呼吸困難などの症状が現れることがある。

寄生虫が見つかればすぐに駆虫を。定期駆虫で予防に努めましょう。

猫に寄生したノミは、温暖な部屋のなかであれば約1~2カ月で成虫に成長し、あっという間に繁殖します。ネコノミは犬にも感染します。そのため1匹の猫に感染が見つかった場合は、同居するすべての猫や犬に駆除をおこなう必要があります。また、回虫などの内部寄生虫は、母猫から子猫に感染するケースが多く、しばしば重い症状を引き起こします。そのため子猫には生後4週齢からの定期的な駆虫が推奨されています。なお、フィラリア症(犬糸状虫症)は犬の病気のイメージが強いですが、じつは猫にも感染します。突然死をまねくことがあるので、何より予防が大切です。

猫に感染する寄生虫には、ズーノーシス(人畜共通感染症、ペット感染症)として、人間にも害を与えるものがあります。たとえば回虫は、幼児に感染して発熱や咳、視力障害などを引き起こします。これらの病気にならないようにするには、愛猫に定期的に駆虫薬を投与して、普段から予防に努めることが大切です。ただし、寄生虫の駆虫薬は、市販薬と動物病院の処方薬とでは、効果や安全性に大きな違いがあります。また、猫の年齢や体重、寄生虫の種類によって、効果や投与量も異なります。きちんと動物病院で診察を受けたうえで、適切な治療をおこなうようにしましょう。

猫と人との間で共通して感染するおもな寄生虫による病気(ズーノーシス)
回虫症虫卵が口に入ることで人に感染。幼児に発症しやすく、発熱や咳、視力障害などを引き起こす。
瓜実条虫症媒介するノミが口に入ることで人に感染。幼児に発症しやすく、下痢を引き起こす。
鉤虫症幼虫が皮膚を破って侵入することで人に感染。皮膚炎を引き起こす。
ツメダニ症感染猫との接触で人に感染。皮膚炎を引き起こす。
疥癬(ヒゼンダニ症)感染猫との接触で人に感染。皮膚炎を引き起こす。
ノミ刺咬症感染猫との接触で人に感染。吸血されると激しいかゆみを引き起こす。
トキソプラズマ症感染猫の糞便と一緒に排泄されたオーシスト(卵)が、口に入ることで人に感染。妊娠中や抵抗力が落ちている人に、流産や神経症状などの重い症状を引き起こす。
エキノコックス症感染猫の糞便と一緒に排泄された虫卵が、口に入ることで人に感染。長い潜伏期間を経て重い肝機能障害を起こし、放置すれば命に関わる。ただし、猫の場合はほぼ無症状。

猫の寄生虫による病気については、以下をご覧ください。

猫の外部寄生虫症

猫の内部寄生虫症

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