犬の肥満の要因は飼育環境中に。ほかに避妊・去勢や病気によるホルモン異常も。
室内犬の飼育環境中には、お菓子や野菜、果物など、たくさんの食べものが存在します。それらの食べものを欲しがり、与えればよろこんで口にする愛犬の姿を見て、飼い主はついつい間食をさせてしまいがちです。とくにジャーキーなどのおやつの与えすぎは禁物。見ためはひと口サイズでも、いくつも与えればすぐに一日の必要カロリーをオーバーしてしまいます。しつけのご褒美のおやつも、量を考えて与えなければ過剰摂取となります。毎日のドッグフードは給与量を正しく与えているはずなのに太り気味・・・。そのような場合は、間食のおやつが肥満の要因となっていないか疑ってみましょう。
子犬のころから栄養価の高い食事や間食が習慣になっている場合は要注意です。そのまま与え続けていれば、発育ざかりを過ぎたころからカロリーの過剰摂取となり、さらに運動不足もともなえば、胴回りに脂肪が付いて肥満となります。犬の肥満には、いわゆる”中年太り”もみられます。その場合は、消費カロリーが減る中年齢以降の犬に、ドッグフードを若いころと変わらない量で与えることが原因となります。犬は自分で好き勝手に食事することはできません。飼育環境によって愛犬が肥満になる場合は、飼い主の飼育管理に原因があるといえます。
飼育環境による場合 | 食べ過ぎ、運動不足 |
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病気や体質の変化による場合 | 避妊・去勢後、甲状腺機能低下症 |
一方で、飼育環境による肥満とは別に、病気や体質の変化が原因で起こる肥満もあります。たとえば甲状腺機能低下症といった病気は、内分泌性のホルモン異常によって過食を引き起こします。食事量はあまり変わらないのに、急な体重増加がみられる場合には、これらの病気が疑われます。また、避妊・去勢手術を済ませた犬は、肥満になりやすい傾向があります。これは避妊・去勢によって活動量が減り、基礎代謝量が低下した犬に、避妊・去勢前と変わらない量の食事を与えるのが原因と考えられます。また、前述の甲状腺機能低下症は、避妊・去勢手術を済ませた犬に起こりやすいといわれています。
椎間板ヘルニアを始め、さまざまな病気を招く犬の肥満。とくに注意すべき犬種も。
体重が5kg、10kgほどの犬が2~3kgほど太るのと、われわれ人間が2~3kgほど太るのとでは、そもそも事情が大きく異なります。肥満の犬が標準より1.5倍~2倍近くの体重の体を動かそうとすれば、心臓や足腰に大きな負担がかかります。肥満を放っておくと、たとえば心肥大や糖尿病を引き起こし、重みによって骨や関節に負担をかけ、骨関節炎(変形性関節症)や椎間板ヘルニア、前十字靭帯断裂、骨折の引き金となるほか、股関節形成不全(股関節形成異常)の症状を悪化させてしまうことがあります。椎間板ヘルニアや前十字靭帯断裂、股関節形成不全(股関節形成異常)になりやすい犬種は、これらの病気予防のためにも、普段から肥満予防に努める必要があります。
椎間板ヘルニアになりやすい犬種 | ダックスフンド、ビーグル、シーズー、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ペキニーズ、パグ など |
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前十字靭帯断裂になりやすい犬種 | ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ロットワイラー、チャウチャウ、ニューファンドランド、ダックスフンド、ビーグル など |
股関節形成不全(股関節形成異常)になりやすい犬種 | シェパード、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン、ニューファンドランド、ロット・ワイラー、セント・バーナード、グレート・ピレニーズ など |
また、肥満の犬は暑さに弱いため、熱中症(熱射病、日射病)になりやすい傾向があります。もともと犬は汗腺が少なく、汗による体温調節が難しい体質を持っています。とくにパグやシーズー、ペキニーズ、ブルドッグなどの短吻種(鼻の短い犬種)の犬は、生まれつき呼吸機能に問題があることが多く、これらの犬が肥満傾向であれば、なおさら熱中症(熱射病、日射病)に注意する必要があります。
愛犬のダイエットは厳格な食事管理と適度な運動で。
愛犬のダイエットをはじめる場合は、最初に無理のない目標体重を決めたうえで、カロリー控えめのドッグフードを与え、少しずつ減量していくのが理想です。獣医師とよく相談するようにしましょう。最近では市販のドッグフードでも、カロリーを抑えつつ栄養素やビタミンなどを機能的に配合する、ダイエット用フードがあります。そのようなドッグフードを最適な給与量で与えるようにしましょう。間食などが習慣になっている場合は、1日分のドッグフードを数回に分けて与えるようにすれば、量は同じでも犬の空腹感を満たすことができます。
食事管理に加えて、散歩などの軽い運動をきちんと日課にすることも重要です。しかし、急激なダイエットは犬の健康を損なうおそれがあります。たとえば肥満の犬に、突然、激しい運動を強いれば、心臓や足腰に大きな負担がかかります。甲状腺機能低下症といった病気による肥満であれば、食事や運動によるダイエットの前に、まずはそれらの病気自体を治す必要があります。いずれにしても、ダイエットは犬も飼い主も忍耐が強いられ、できれば避けたいものです。そのためにも、ダイエットが必要になるほど太らないように、日頃から愛犬の飼育管理を徹底して、肥満予防に努めるようにしましょう。
犬の肥満に関連する病気については、以下をご覧ください。