【症状】症状はさまざま。「多中心型」では体表のリンパ節がいくつも腫れる
悪性リンパ腫は、体のどこのリンパががん化するかによって症状が異なります。
「多中心型リンパ腫」では、下あごや腋の下、股の内側、膝の裏など、体表のリンパ節が何か所も腫れるほか、元気が少しなくなる、食欲が少し低下するといった症状が見られることがあります。症状が進むにつれて、運動不耐性(運動をしたがらないこと)や食欲不振、嘔吐や下痢が見られるようになり、末期では痩せてきて、免疫力も低下し、肺炎や膀胱炎など、様々な感染症にかかりやすくなります。
「消化器型リンパ腫」では、消化管のリンパ組織やリンパ節が腫れるもので、これにともない下痢や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が見られます。
「皮膚型リンパ腫」では、皮膚に腫瘍として現れるもので、大きさの様々なできものや紅斑、脱毛など、様々な皮膚病変が見られます。皮膚型は、皮膚に腫瘍ができる脂肪腫や肥満細胞腫などの他の腫瘍や皮膚病などと見分けがつかないことがあります。
この他、「縦隔型リンパ腫」では、胸腔内にあるリンパ組織が腫れるもので、これにともなって頻呼吸(呼吸の回数が増加すること)、咳やチアノーゼなどの呼吸器症状が見られます。
【原因】原因不明。リンパ腫全体の約80%が「多中心型」
悪性リンパ腫が発症する原因は解明されていません。犬にもっとも多いのが「多中心型リンパ腫」で、リンパ腫の大半を占めます。犬種ではゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ボクサー、バセット・ハウンド、セント・バーナードなどがリンパ腫になりやすい傾向にあります。
【治療】化学療法(抗がん剤の投与)が主体
悪性リンパ腫の治療は、診断の確定後、おもに化学療法(抗がん剤投与)を行います。しかし、リンパ腫のタイプによっては、外科的な処置などが必要となります。リンパ腫のタイプや進行程度、化学療法への反応などによって、その予後は様々です。
【予防】早期発見・早期治療が大切。幼いうちからボディチェックを
リンパ腫は、原因がはっきりしないため予防は困難です。したがって、早期発見と早期治療が何より大切です。発症しやすいといわれる犬種を飼っている場合は、日頃からあごやわきの下、足のつけ根などのリンパ節を含め、全身の皮膚に腫れやしこりがないか、愛犬のボディチェックを行いましょう。
「犬の悪性リンパ腫(リンパ肉腫)」のポイント
治療をはじめる前に、治療によってどのくらい延命できるのか、治療費はいくらくらいかかるのか、抗がん剤の副作用にはどのようなものがあるか、などについて、獣医師に相談しましょう。