【症状】嘔吐や40℃前後の発熱、下痢など。重症では脳症や神経症状などを起こす
犬伝染性肝炎にかかると、肝臓に炎症が起こり、嘔吐(吐く)、39.5〜41℃の発熱、下痢、腹痛などの症状が現れます。病気の程度は軽いものから重いものまで様々。軽症の場合は軽い発熱や鼻水が出る程度ですが、重度の場合は肝臓の機能不全による肝性脳症や低血糖からくる神経症状(無気力、虚脱、昏迷、昏睡、痙攣発作など)や、出血傾向(皮膚の点状〜斑状の出血、鼻血、下血など)が見られる、ときに脳炎が起こることもあります。特にワクチン未接種の犬、とりわけ子犬が感染した場合は、死亡するケースが多く見られます。また、他のウイルスと混合感染すれば致死率がより高くなります。
なお、回復期にはブルーアイ(角膜が浮腫を起こし、青白く濁って見える)や前部ブドウ膜炎が見られます。これは通常回復していきますが、時に緑内障や角膜潰瘍に進行することがあります。
【原因】犬アデノウイルス1型の感染が原因
犬伝染性肝炎は、犬アデノウイルス1型に感染することで発症します。ウイルスは感染犬の分泌物(涙や鼻水、唾液尿、便など)のすべてに含まれ、これらを舐めたり、汚染された食器を使用することで感染します。ウイルスは外部環境での抵抗力が強いため、室温でも一定期間は感染性を保ちます。したがって回復した犬の尿中に少なくとも6〜9ヵ月排泄され、ほかの犬への感染源となります。
【治療】点滴は輸血、食事療法などで治療する
犬伝染性肝炎の有効な治療薬はありません。そのためウイルス感染によってダメージを受けた肝臓の細胞が再生されるまでの間、積極的な支持療法をおこないます。支持療法としては点滴や輸血、食事療法などがあります。また、細菌による肺炎や腎盂腎炎といった二次感染を防ぐため抗生剤の投与が行われることもあります。
【予防】ワクチン接種が有効。適切な時期・回数の接種を
犬伝染性肝炎の予防には、ワクチン接種が有効です。子犬を飼い始めたらすぐに動物病院で健康診断を受け、適切なワクチンの接種時期や回数について相談するようにしましょう。また、成犬や老犬になってからも、年に1度のワクチン接種を行いましょう。その他の予防法としては、散歩時に拾い食いをしたり、草を食べたり舐めたりしないよう、普段からしつけておくことも重要といえます。