【症状】第三眼瞼腺という腺組織が飛び出し、赤く腫れあがる
犬の目には、上眼瞼(上まぶた)と下眼瞼(下まぶた)のほか、鼻側に瞬膜とも呼ばれる第3番目の眼瞼(がんけん)があります。そして第三眼瞼の裏には第三眼瞼腺(瞬膜腺)という腺組織があり、チェリーアイはこの第三眼瞼腺が瞬膜の外に飛び出してしまう病気です。飛び出した第三眼瞼腺はさまざまな刺激にさらされ、炎症を起こし、サクランボのように赤く腫れ上がります。また、この部分が目の結膜や角膜を刺激し、結膜炎や角膜炎が起こることもあります。
こうしてチェリーアイになった犬には、目を気にして前足でこすったり、まぶしそうに目を細めたり、まばたきの回数が増えたりといったしぐさが見られるようになります。そのほか、流涙(涙を流すこと)や目の充血が認められます。チェリーアイは片方の目だけに起こることもありますが、両方の目に起こることもあります。
チェリーアイは、通常、生後6ヵ月齢から2歳齢くらいの若い犬に多く認められます。犬種では、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、ビーグル、バセット・ハウンド、ブラッド・ハウンド、ボストン・テリア、ラサ・アプソ、シーズー、ペキニーズなどでよく見られます。これらの犬種では1歳以下で発症する例がほとんどです。
【原因】先天的な原因の他、外傷や目の奥にできた腫瘍なども原因に
第三眼瞼腺は、通常は結合組織によって眼窩骨膜(がんかこつまく:目の周りにある骨の膜)にしっかりとつなぎとめられています。しかし、先天的にこの第三眼瞼腺と骨膜とをつなぎとめる力が弱くなっている場合は、チェリーアイを発症しやすくなります。また、先天的な原因だけでなく、目やその周囲に外傷を負った場合、目の奥に腫瘍があった場合などにもチェリーアイを起こすことがあります。
【治療】飛び出している部分を元に戻す。再発をくり返す場合は外科手術も
チェリーアイは、飛び出している第三眼瞼腺をできるだけ元に戻す治療が行われます。飛び出している部分が小さければ、抗炎症薬の点眼などが行われます。飛び出した部分が大きい場合や、小さくても再発をくり返す場合などは、外科手術による整復(元の位置に戻すこと)が行われます。第三眼瞼腺は目の表面を保護する涙を作っている重要な組織のため、外科手術では、第三眼瞼腺を可能な限り温存する方法が取られます。
急性で軽度のチェリーアイでは、予後は良いことが多いです。しかし、慢性で重度のチェリーアイでは、再発を繰り返すことがあり、慢性的な炎症によってすでに第三眼瞼腺の涙腺としての機能が低下している場合があります。このような例では、乾性角結膜炎(ドライアイ)を起こしやすくなっているため、手術による整復に加えて、術後も乾性角結膜炎の治療が必要となってくることがあります。
【予防】早期発見・早期治療が大切
チェリーアイには、特別な予防方法はありません。早期発見・早期治療がすすめられます。
「犬のチェリーアイ(第三眼瞼腺逸脱)」のポイント
チェリーアイが起こったら、犬が目を気にして引っかいたりしないように注意し、早めに動物病院へ連れて行きましょう。