【症状】複数のタイプに分類され、症状、発症しやすい年齢は様々
リンパ腫は、腫瘍ができる部位によって、タイプが複数に分類され、かつ、その症状も様々です。ここでは、猫に見られやすいリンパ腫のうち、3タイプを挙げています。
1つは、胸腔の胸腺や縦隔リンパ節に腫瘤ができ、胸水がたまる「縦隔型リンパ腫」です。これはFeLV陽性の若齢の猫に発症することが多く、胸水のため、咳や呼吸困難、チアノーゼといった呼吸器症状が見られるほか、元気の消失や食欲・体重の低下が見られ、嘔吐や下痢が起こることもあります。
もう1つは、腸管や腸間膜のリンパ節に腫瘤ができる「消化管型リンパ腫」です。これは老猫に多く見られ、嘔吐や下痢といった消化器症状のほか、食欲・体重の低下などが見られます。また、リンパ腫が大きくなると腸閉塞の原因となったり、腫瘍がある部分の腸管がもろくなって破れ、腹膜炎を起こすこともあります。
3つめは脊髄や脳といった中枢神経系に腫瘤ができる「中枢神経型リンパ腫」です。これは脊髄にできるリンパ腫は通常FeLV陽性の猫に多く見られますが、脳にできるリンパ腫はFeLV陰性の猫でも見られます。中枢神経型リンパ腫では、不全麻痺や完全麻痺、運動失調のほか、てんかん発作や性格の変化、知覚過敏といった中枢神経系の症状が見られます。このほか、リンパ腫のできる部位によって、多中心型、皮膚型、腎型などに分類されています。
【原因】FeLVの感染がおもな原因。免疫力の低下、ストレスなども関与か
多くは猫白血病ウイルス(FeLV)の感染が原因です。しかし、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染していなくてもリンパ腫を発症することがあり、その原因はよくわかっていません。高齢化による免疫力の低下、猫免疫不全ウイルス(FIV)など種々のウイルスや細菌の感染、ストレス、発がん性物質の摂取、腸管の炎症などが複雑にからまって、リンパ球のがん化を促進するのでは、と考えられています。
【治療】抗がん剤を用いた化学療法を中心に、対症療法も行う
リンパ腫の治療はおもに抗がん剤を用いた化学療法が行われます。中枢神経型リンパ腫では放射線療法を併用することもあります。このほか、各種症状に応じた対症療法も行われます。例えば、縦隔型リンパ腫で胸水がたまって呼吸困難を呈している場合には、胸水を抜き取り、呼吸を楽にさせるといった処置をとることがあります。
【予防】ワクチン接種や室内飼いでFeLV感染症を防ぐ
リンパ腫の予防として、その発症に関与することが多い猫白血病ウイルス(FeLV)感染症にならないように、ワクチン接種を適切に行うことが重要です。さらに室内飼いに徹するなど、猫白血病ウイルスの感染の可能性をできるだけ減らすことも予防につながります。