【症状】乳腺が熱をもち、触られるのを嫌がる
乳汁を十分に排出できずに乳腺が詰まり、炎症を起こした乳腺炎(うっ滞性乳腺炎)の場合、乳房が張って硬くなり、その部分が熱をもつようになります。また、痛みがあるため、炎症を起こしている乳房に触れられることを嫌がります。これを放っておいたり、猫の体力が弱ったりしているときに、乳腺に細菌が侵入して化膿することがあります(化膿性乳腺炎)。乳腺が化膿すると、その乳房から膿や血の混じったような分泌物が出るようになります。症状が重くなってくると、発熱が見られ、元気を失い、食欲が落ちてしまうことがあります。
【原因】乳腺内に母乳が過度に残ったり、授乳時の傷口からの細菌感染が原因に
うっ滞性の乳腺炎は、乳腺内に母乳が過度に残ってしまうことで起こります。母乳が残る原因としては、授乳中の子猫が離乳されたり、母猫の手元から離されてしまったりして急に母乳が飲まれなくなることや、母猫自体の乳汁分泌量が多いことが挙げられます。一方、化膿性の乳腺炎は、乳腺に細菌が感染することで起こります。子猫が爪で乳房を傷つけてしまい、その傷口から細菌が感染するケースや、乳腺の開口部から細菌が感染するケースなどがあります。特に、授乳中は乳腺開口部が普段より開いているために、感染しやすくなっています。また、うっ滞性乳腺炎を起こしているところに細菌が感染し、化膿性乳腺炎となる場合もあります。
【治療】乳汁のうっ滞を取り除くための搾乳や抗生物質の投与を
細菌感染がともなわないうっ滞性乳腺炎の場合は、乳汁のうっ滞を取り除くために、罹患した乳房をマッサージし搾乳します。また、乳汁がうっ滞している状態では細菌感染を起こしやすいことから、抗生物質を予防的に投与することもあります。一方、化膿性の乳腺炎であれば抗生物質によって感染を抑えます。発熱や食欲の低下などから、脱水といった症状がある場合は、点滴など症状に応じた治療を行うこともあります。同時に日に数回、温シップをあてて悪くなっている乳房から搾乳することもあります。乳腺炎が悪化して壊死などが起こった場合、その部分を取り除くといった外科的処置を行うこともあります。また、授乳中の場合は、母猫の症状によっては子猫への感染などを防ぐために、授乳を中止して人工哺乳に切り替える必要が出てくることもあります。
【予防】飼育環境を清潔に保ち、授乳中の子猫を母猫から引き離さない
乳腺炎の予防としては、母猫の飼育環境を清潔に保ち、授乳中の子猫を急に母猫から引き離さないことが大切です。また、乳腺炎になると、母乳の味が変化し、子猫がミルクを飲まなくなることがあります。乳腺炎の早期発見のために、母猫が許せば日に1回程度は子猫の体重を計測し、子猫が十分にミルクを飲んでいるか、順調に成長しているかを確認しておくと良いでしょう。子猫の体重が前の日から変化しない、あるいは減っているのであれば、すぐにかかりつけの動物病院で母子ともに診察を受けることがすすめられます。