【症状】頻繁にトイレに行くのに尿が出ない、血尿など
猫下部尿路疾患になると、頻繁にトイレに行くのに尿が出ない、排尿時の痛みで鳴く、トイレ以外の場所で排尿する(不適切な排尿)、血尿など、膀胱炎の症状が現れます。また、尿道結石や尿道栓子(炎症で尿路からはがれ落ちた細胞や白血球、赤血球、尿結晶、粘液などが固まってできた栓のこと)などにより尿道が閉塞し、排尿がほとんど、あるいはまったくできない状態になると、急性腎不全を起こし、尿毒症を引き起こすことがあります。
【原因】尿結石や細菌感染など。原因不明の「特発性FLUTD」が約半数を占める
猫下部尿路疾患は、膀胱や尿道における尿結石や尿道栓子、細菌感染といったことが原因で起こります。しかし、調べても上記の症状を引き起こす原因がまったく不明のものもあり、これは特発性FLUTDと呼ばれ、FLUTD全体の約50%を占めています。特発性FLUTDは、特発性膀胱炎や間質性膀胱炎と呼ばれることがあり、原因は不明なものの、膀胱上皮のバリア機能の異常や、肉体的・精神的なストレス、自己免疫性疾患などが関与していると推測されています。
猫下部尿路疾患の約20%を占めるのが尿結石(結晶)です。尿結石には様々な種類がありますが、代表的なものはストルバイト尿結石、シュウ酸カルシウム尿結石です。これらはリンやマグネシウム、カルシウムといったミネラルバランスが適切に取れていない場合や、食事の影響で尿が酸性やアルカリ性に傾きすぎていると形成されやすくなりますが、体質的な素因もあるようです。
【治療】原因に合わせた処置を行う
猫下部尿路疾患の治療は、尿道が尿道結石や尿道栓子で閉塞している場合には緊急処置が必要となります。麻酔あるいは鎮静をかけた状態でカテーテルを用いて尿道の閉塞を解除し、膀胱内を洗浄します。尿道閉塞を起こしてから時間がたって急性腎不全に陥っているようであれば、その治療も並行して行っていきます。尿道閉塞を何度も繰り返しているケースでは、尿道を広げる手術が行われることもあります。
膀胱内に尿結石がある場合は、結石の種類によっては外科手術による摘出手術が行われたり、食事療法や輸液療法などの内科的治療で結石を溶解させたりします。細菌感染によるものでは、抗生剤による治療が行われます。
特発性FLUTDの場合は、現在確実に有効と言える治療法は見つかっていませんが、炎症や痛みを緩和するための投薬が行われることがあります。特発性FLUTDは自然に治ることもありますが、治ってもすぐに再発を繰り返すため、上記の投薬のほか、ストレス対策としての環境修正などが推奨されています。
【予防】生活環境の改善を行うとともに、愛猫の肥満防止に取り組む
猫下部尿路疾患の予防は、膀胱や尿道の疾患を防止するために、トイレを清潔にする、いつでも水を飲める環境を整えるほか、猫が3次元で遊べるように家具の配置を変えたり、キャットツリーなどを導入したり、遊ぶ時間を増やしたりといった対策が効果的です。尿石症では、尿結石の種類に応じた食事を与えることが推奨されます。また、肥満はFLUTDの再発を高めるため、適正体重を保つように心がけてあげましょう。