【症状】急性期、無症状キャリア期などを経て猫エイズに
猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染して1カ月ほどたつと、発熱、下痢、リンパ節の腫れなどの症状が現れるようになります。このような期間を「急性期」といいますが、一過性で症状が軽いため、飼い主に気づかれないことが多いです。急性期が数週間から数カ月続いた後には、症状がまったく見られない「無症状キャリア期」に入ります。無症状キャリア期は数カ月から数年続き、多くの猫はそのまま無症状キャリア期を維持し、通常、もしくはやや短めの寿命を迎えます。しかし、一部の猫は進行性の免疫不全状態に陥り、口内炎や鼻炎、結膜炎、下痢、皮膚炎などの症状が現れ、さらに貧血やがん(悪性腫瘍)、日和見感染を引き起こし、体重も減少し、衰弱して死に至ります。
【原因】感染猫とのケンカなどから感染
猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)は、猫免疫不全ウイルス(FIV)への感染が原因となって発症します。未感染の猫が外で感染猫とケンカして、咬まれたり、ひっかかれたりしたときなどに、傷口から感染猫の唾液や血液が入り、猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染します。そのほか、周産期に母猫が猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染していると、子猫にも感染することがあります。
【治療】有効な治療法はなく、対症療法が中心となる
猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)に対する有効な治療法はありません。口内炎や皮膚炎といった症状があれば、抗生物質や抗炎症薬の投与、輸液などによる対症療法を行って、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の改善を行います。また、ほかの感染症にかからないように室内飼育を行い、ストレスの少ない生活をさせ、栄養バランスのとれた食事を与えることも家庭での看護として重要です。
【予防】室内飼いに徹し、感染猫との接触の機会を減らす
室内飼いに徹し、すでに感染している猫との接触を避けることが、猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)の重要な予防対策となります。日本でも予防ワクチンが承認され、2008年に発売されましたが、まだ発売されて間もないことから、接種する場合は安全性・有効性について、かかりつけの獣医師とよく相談するようにしましょう。
「猫エイズ(猫免疫不全ウイルス(Feline Immunodeficiency Virus:FIV)感染症、ネコエイズ) 」のポイント
感染を予防するには、完全室内飼いに徹することが大切です。外出する猫の場合は、猫同士のケンカを防ぐために避妊・去勢手術を行うことが有効です。それによって、外出したときに感染猫からウイルスをもらってくる可能性を減らすことができます。