【症状】食欲低下、おしっこの量が減る、頻回の嘔吐など
急性腎不全は、急激に腎臓の働きが低下する病気です。食欲の低下、元気がなくなる、おしっこの量が明らかに減る、あるいはまったく出ない、頻繁に嘔吐する、などといった症状が見られます。病状は急激に悪化し、治療が遅れると脱水を起こし、口臭(アンモニア臭)がきつくなったり、嘔吐がさらにひどくなったりするほか、ひどい場合には、痙攣(けいれん)や体温の低下、昏睡といった重度の尿毒症の症状が現れ、命に関わる場合もあります。
【原因】腎臓疾患だけでなく猫下部尿路疾患や心不全など、原因は様々
急性腎不全は、重度の貧血や脱水、ショックを引き起こす病気や、猫下部尿路疾患:FLUTD(猫泌尿器症候群:FUS、尿石症)による尿路閉塞、心筋症による心不全といった病気、あるいは、腎臓に毒性のある物質による中毒など様々な原因によって起こります。急性腎不全を引き起こす原因は、その発生機序(メカニズム)によって、「腎性腎不全」「腎前性腎不全」「腎後性腎不全」の以下の3つに分けられます。
- 腎性腎不全
細菌性腎盂腎炎などの感染症や腎毒性のある物質の中毒などで、腎臓を構成する糸球体や尿細管そのものがダメージを受けて生じるもの - 腎前性腎不全
重度の貧血や脱水、ショック、心筋症による心不全などで腎臓に血液がうまく送れずに生じるもの - 腎後性腎不全
猫下部尿路疾患や腎結石などによる尿路閉塞(排尿困難)や、事故で尿路が傷ついたりしたことが原因で排尿がほとんどできなくなって生じるもの
【治療】症状が軽いうちに治療を行うことが大事
急性腎不全は、発症後すみやかに集中治療を行えば、回復する可能性が高くなります。治療は、原因によって変わる部分もありますが、基本的には利尿剤や点滴、あるいは、透析治療によって脱水と電解質などのバランスの改善を行うとともに、尿毒症物質の排泄を促します。腎後性腎不全の場合には、尿路の閉塞解除や損傷の修復のため、手術が必要となることがあります。
【予防】ワクチン接種、食事+健康管理、室内飼いの徹底など
急性腎不全の予防には、腎不全につながる細菌感染や尿路閉塞などを起こさないように、子猫の頃からワクチン接種や、食事を含めた健康管理(人間用に味付けされた食品を与えない、清潔なトイレを用意する、など)を行うとともに、ワクチンで予防できない感染症にならないよう、また拾い食いなどをして中毒を起こさないよう、室内飼いに徹することなどが大切です。6歳~7歳頃から、少なくとも年に一度は動物病院で定期検査を受けて、腎臓の状態をチェックするようにしましょう。
「猫の急性腎不全」のポイント
急性腎不全は、一度発病すると完治が不可能な慢性腎不全と違い、腎機能が壊れていないうちに治療できれば回復する可能性のある病気です。早期発見・早期治療を心がけましょう。