【症状】「皮膚型」と「内臓型」があり、発症部位によっては悪性度が高め
「皮膚型肥満細胞腫」は、頭部や首のまわりに好発しますが、ほかの部位に生じることもあります。皮膚にできる肥満細胞腫では、脱毛をともなう小さな硬いしこりが1個だけポツッとできることが多いですが、体のあちこちにできることもあります。
「内臓型肥満細胞腫」は、おもに脾臓や肝臓、小腸に発症します。内臓型肥満細胞腫の場合、初期には軽度の嘔吐や下痢が見られます。腫瘍の進行により、嘔吐や下痢がひどくなってくることがあります。また、次第に食欲不振、元気低下、体重の減少といった症状も見られるようになります。そのほか、腹部を触るとしこりが感じられたり、やせているのにお腹が目立つといった様子が見られる場合もあります。脾臓や腸管などにできる肥満細胞腫の多くは悪性度が高く、転移しやすいため、命の危険性があります。
【原因】品種による素因や、猫免疫不全ウイルス(FIV)との関連が疑われる
肥満細胞腫が発生する原因自体はよくわかっていません。肥満細胞腫の平均発症年齢は9~10歳齢ですが、特定の品種(シャム)では若齢で皮膚型肥満細胞腫の発生が認められているため、品種による素因があるのでは、と考えられています。また、多発性の皮膚型肥満細胞腫では猫免疫不全ウイルス(FIV)との関連も疑われています。
【治療】患部の切除手術後、放射線治療や補助療法を行うことも
「皮膚型肥満細胞腫」の場合、腫瘍とその周辺部分を手術で切除しますが、腫瘍が大きく完全に切除しきれなかった場合には放射線治療や合成副腎皮質ホルモン剤などの塗布を行います。また、そのほかの補助療法や化学療法が行われることもあります。シャムに好発するタイプの皮膚型肥満細胞腫は自然消滅することもあるため、病理検査の結果によっては経過を観察する場合があります。
「内臓型肥満細胞腫」では、患部を外科的に切除します。外科手術後は皮膚型肥満細胞腫と同様、放射線治療や化学療法、補助療法などが行われることがあります。
【予防】普段から愛猫の体をチェックし、早期発見・早期治療に努める
肥満細胞腫の予防自体は難しいため、日頃から愛猫の体をなでて、しこりがないかチェックしたり、嘔吐や下痢がなかなか治らない場合には精密検査を受けさせたりと、早期発見・早期治療を心がけるようにしましょう。