【症状】皮膚や口腔内などに発症。部位によって症状は様々
皮膚にできる扁平上皮がんは、猫では白い毛の部分や毛の薄い部分にできやすく、とくに顔面の鼻すじや眼瞼、耳介に多く発生します。扁平上皮がんに侵された皮膚は、皮膚炎のように、脱毛し、厚いかさぶたや潰瘍ができたり、治りにくい擦り傷のように見えたりします。がんが進行してくると、侵された部分が腫れて潰瘍がひどくなり、出血したり膿んだりするほか、がんができている部分(例えば耳介)が脱落してしまったりすることがあります。
扁平上皮がんは、皮膚以外にも発生し、扁平上皮組織がある部位(目、口腔、気管など)のどこにでも生じる可能性があります。扁平上皮がんは発生した当初、がんができた部位に炎症やただれ、潰瘍、しこりなどを形成し、がんが進行するにしたがって、その部位の機能を障害するようになります。例えば、猫の口腔内腫瘍の大半を占めている扁平上皮がんの症状は次のようになります。
口腔内に扁平上皮がんができた場合、舌や歯茎などにしこりができ、その部分がただれたり、潰瘍ができたりし、出血が見られます。このため、血の混じったネバネバとしたよだれをよく流すようになります。また、食べ物や水が飲み込みにくい様子を見せたりするようになり、ときにしこりが大きくなりすぎて口を閉じられなくなることがあります。
【原因】紫外線や被毛の色、煙草の煙など
扁平上皮がんは、扁平上皮ががん化することが原因で起こります。皮膚の扁平上皮がんができる要因としては、長期間、日光の紫外線を浴び続けることで、細胞が障害されがん化することが考えられます。とくに白猫や、被毛の一部が白い猫は紫外線による影響を受けやすいため、日光皮膚炎を起こしやすく、このため皮膚の扁平上皮がんを発症しやすい傾向にあります。また、猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)などによって免疫力が低下している場合も発症しやすくなります。
皮膚以外の扁平上皮がんは、どんな色の猫にでも発生しますが、とくに高齢の猫での発症が多いようです。口腔内の扁平上皮がんでは、環境中の煙草の煙など、大気を汚染するような物質が要因と考えられています。
【治療】がんができた部分をできるだけ広く切除する外科的治療が主体
扁平上皮がんの治療では、おもに外科的治療が行われます。扁平上皮がんができた部分を中心にその周囲の組織をできるだけ広く切除します。外科的治療の補助療法として、放射線治療や抗がん剤治療などが行われることもあります。
【予防】室内飼いで紫外線を予防し、日頃から皮膚や口腔内をチェックする
皮膚にできる扁平上皮がんの予防としては、猫が紫外線にあまり当たらないよう室内飼いをすることが有効です。しかし、室内飼いの猫でも扁平上皮がんになることがあるので注意が必要です。とくに白い猫や白い被毛部分を持つ猫の場合は、紫外線が強い時期・時間帯に太陽の光を浴びたりしないように気をつけましょう。また、普段から鼻や耳周辺の皮膚をチェックし、皮膚があれていたり、擦り傷のような傷口がなかなか治らなかったりする場合は、動物病院で診察を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。また、扁平上皮がんは口腔内にもできやすいため、猫の口の手入れをするときに異常がないかどうか、注意するようにしましょう。