【症状】痛みから、骨折した箇所をかばうように動く
骨折した場所によって症状は様々ですが、多くの場合では骨折した周囲が腫れて痛がります。このため、猫は動くのを嫌がり、骨折した箇所をかばうような動作をします。痛みがひどいときには元気や食欲がなくなることもあります。折れた骨が体から飛び出して皮膚が裂けている開放骨折の場合は、出血が認められ、放っておくとショックや感染症を起こすことがあります。交通事故の場合は、足の骨折だけでなく、肋骨や脊椎(せきつい:首から腰にかけてある骨、背骨のこと)、骨盤などの骨折が、落下事故の場合では頭部やあごの骨折が多く見られます。
さらに、交通事故や落下事故で体に強い衝撃を受けた場合は、骨折だけでなく神経や内臓にまで損傷を受けることがあります。また、頭の骨や脊椎の骨折で中枢神経系にダメージを負うと、麻痺をはじめ、様々な神経症状が生じることがあります。このような強い衝撃を受けた場合は、命に関わる可能性が高く、緊急に動物病院に連れていく必要があります。
【原因】交通事故と高所からの落下事故によるものが多い
骨折の原因で最も一般的なものは、交通事故と高い場所からの落下事故です。落下事故では、ベランダに干してある布団の上などに飛び乗って、布団ともども落下してしまうということがあり、高層住宅では特に注意が必要です。このほか、室内で骨折してしまうこともあります。例えば、飼い主が後をついて歩く猫に気づかずに扉を閉め、足や体をはさんで骨折させてしまったり、一緒に眠っていて、寝返りをしたときに猫にのしかかって骨折させるという場合もあり、これは子猫によく見られます。また、外出時、猫が塀や壁のすきまを通り抜けようとしてはさまり、パニックになって自ら骨を折ってしまうこともあります。
【治療】折れた骨を整復して患部を固定。何より安静が大切
骨折の治療は、一般的に折れた骨を整復して患部を固定します。処置後は、しばらくの間、患部を動かさないようにしなければなりません。また、骨折の治療ではリハビリ療法も重要になります。なお、交通事故や落下事故で他の臓器、神経がダメージを受けた場合や、ショック状態にあるときには、これに応じた治療が優先して行われ、状態が落ち着いたあとに骨折の手術が行われます。
【予防】最善策は、猫を部屋の外に出さないこと
交通事故や落下事故を防ぐことが重要です。そのためには、猫を室外に出さないことが一番の予防方法です。また、マンションの高層階に住んでいる場合は、ベランダなどからの転落事故が起きないように、窓を開けっぱなしにしない、猫をベランダに出す際には目を離さないなど、日頃から注意しましょう。さらに、子猫のときから栄養バランスのいい良質の食事を与え、適度な運動を行って、骨格の健全な発育を図ることが大切です。
「猫の骨折」のポイント
骨折に気づかずに放っておいてしまうと、骨が変な形でくっついたり、のちに、変形性関節症を起こしやすくなったりすることがあります。歩き方がおかしかったり、外出から帰宅後、普段とは様子が変わっている場合には、必ず動物病院で診察を受けましょう。