【症状】初期はほとんど無症状。重度になると元気や食欲がなくなる
肝炎は、軽度の場合は症状を示さないことが多いですが、重度になると、おもに元気や食欲がなくなる、体重が落ちる、吐き気や嘔吐、下痢をする、被毛がぱさつくなどの症状が現れます。
急性肝炎では、明らかな黄疸(白目や口の粘膜が黄色くなる状態)や多飲多尿、尿の色が濃くなるといった症状が認められるようになります。また、お腹に水がたまって(腹水)、お腹が膨らむこともあります。
肝臓の炎症が慢性的に続くと、肝臓の細胞が壊死し、線維化が起こって、肝臓は硬く腫れてきます。このような状態を肝硬変といいます。肝硬変は肝疾患の末期症状で、肝機能は著しく低下し、重度の黄疸や腹水、種々の神経症状が見られるようになります。
【原因】ウイルスや細菌、寄生虫の感染、中毒など、原因はたくさん
肝炎の原因は様々ですが、おもにウイルスや細菌、寄生虫などの感染、毒物や薬物による中毒によって引き起こされます。ウイルスの場合、猫伝染性腹膜炎(FIPV)や猫白血病(FeLV)に感染したときに肝炎を生じることがあります。寄生虫の場合、トキソプラズマなどの原虫が肝臓に寄生することで発症します。毒物や薬物の場合は、銅、ヒ素などの金属類、殺鼠剤に含まれるワルファリンなどのほか、人の風邪薬などに含まれるアセトアミノフェンといった化学物質を摂取したときに発症します。こうした場合、肝炎と同時に様々な中毒症状を起こして危険な状態になることがあります。
【治療】原因を治療しつつ輸液や強肝剤を投与。治療は長期にわたる
肝炎の治療には、原因となっている病気の治療を行うと同時に、輸液や強肝剤を投与して体力の維持と症状の悪化を防ぐ治療を行います。肝炎は治ったように見えても症状が再燃する場合があるため、長期にわたって、定期的に検査をうけ、治療を行っていく必要があります。肝硬変になると予後は悪く、治療は支持療法に徹します。
【予防】ワクチン接種や健康診断を受け、毒物・薬物は管理を徹底する
肝炎の原因となる病気にならないように、猫白血病(FeLV)のワクチン接種を定期的に行い、猫が摂取することのないよう毒物や薬物の管理を徹底しましょう。また、肝炎にかかっても症状が現れにくいため、定期的に健康診断を行って早期に発見できるように心がけましょう。
「猫の肝炎(胆管炎、胆管肝炎、肝硬変)」のポイント
肝炎は重症にならないと、はっきりとした症状を示しません。また、ほかの病気の症状と似ているため、病気を確定するにはきちんとした検査が必要になります。